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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十二話 蠢動
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のではない。国防委員長というポストがまずいんだ。私は委員長を務めた経験が有るから分かっている。国防委員会は主戦派に近い人間が揃っているんだ。彼に話せば主戦派に筒抜けになる可能性がある」

なるほど、それでか……。トリューニヒトはネグロポンティを我々とは余り一緒に呼ばない。別に呼んで話す事が多いがそういう理由か……。苦労するな、トリューニヒト。


帝国暦 488年  8月 16日  オーディン  宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



『そうか、では終わったのじゃな』
「はい」
俺の前にあるスクリーンには頷いているリヒテンラーデ侯の顔が映っている。ほっとしても居るようだ。まあ、現状で同盟との戦争は上手くない、その気持は十分に分かる。

フェザーン方面の紛争は終結した。ビッテンフェルトからの報告によればハルバーシュタットはかなり同盟軍を叩きのめしたらしい。まあこっちは黒色槍騎兵だし兵力の多寡から言っても当然の結果だろう。同盟軍の本隊が来る前に戦闘は終わらせたそうだ。圧勝だな。

『レムシャイド伯からじゃが同盟政府は捕虜交換を急ぎたいようじゃ』
「まあ、そうでしょうね」
『相変わらず主戦派がうるさそうじゃの、向こうは』
「煽った人間も居るかもしれません」
『そうじゃの』
リヒテンラーデ侯は何処と無く嬉しそうだ。相手の政権の脆弱さが分かった所為だろう。困ったもんだ。

『フェザーンでもう一度共同宣言を出してはどうかの。今は戦争は拙かろう?』
「そうですね、悪くないと思います」
『ではそれで同盟と調整してみるか』
そう言うとリヒテンラーデ侯は通信を切った。

暗くなったスクリーンを見ながら思った。同盟軍は予想以上に内部亀裂が酷いのかもしれない。紛争がイゼルローン方面で起きるのなら分かる。あちらは協定は無い、紛争が起きても不思議ではない。血の気の多い馬鹿が事を起しても不思議じゃない。

しかし現実にはフェザーン回廊で紛争が起きた。起きてはいけない宙域でだ。しかも明らかに同盟軍はこちらと戦闘するつもりだったとしか思えない。血の気の多い馬鹿が馬鹿をやったですむ事ではない。

ビッテンフェルトは戦闘によって捕虜交換が中止になる事を恐れた。ハルバーシュタットもそうだ。同盟軍の指揮官はそれを恐れなかった。何故か……。

可能性は二つだ、俺は同盟政府の上層部がこの紛争で帝国との戦争を決意するとは思わなかった。だからこちらに非が無ければ多少の無茶は問題ないと判断した。同盟軍の指揮官も同じことを考えた。多少無茶をしても戦争にはならない、戦争を避けたいのは帝国も同じだと……。

もう一つの可能性は、無茶をして戦争を引き起こす事を考えたということだろう。捕虜交換よりも戦争を望んだ。今なら帝国を弱体化出来る
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