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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十二話 蠢動
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イラも軍の司令官、たしかルフェーブル中将か、彼も部下の掌握が出来ていないとしか思えない……。そんな事を考えているとボロディン本部長がドアを開けて部屋の中に入ってきた。

「遅くなりました」
「本部長、どうなっているのかね!」
ボロディンを叱責したのはネグロポンティだった。これまで居たたまれない思いでいた反動だろうが大人気ない。トリューニヒトも渋い表情をしている。私はボロディン本部長を呼び寄せ、問いかけた。

「ボロディン本部長、何か分かったかね?」
「第三艦隊司令官ルフェーブル中将から状況を聞きだしました。おおよそのところは分かったと思います」

「ではフェザーンの状況を説明してくれ」
「フェザーン方面で帝国軍に戦闘行為に及んだのはおそらくサンドル・アラルコン少将率いる二千隻と思われます」

サンドル・アラルコン少将? ボロディン本部長の言葉にトリューニヒト、ネグロポンティが驚愕している。
「トリューニヒト、知っているのか?」
私の問いかけにトリューニヒトが渋々頷いた。

「ああ、知っている。病的と言って良い軍隊至上主義者だ。彼には何度か捕虜や民間人の殺害、暴行容疑がかけられている」
「それで」
「私が国防委員長だった時、幾度か簡易軍法会議が開かれたのだがいずれも証拠不十分、あるいはその事実無しという事で無罪になった。それで覚えている」

「君が手を回したのではないだろうな?」
私の問いかけにトリューニヒトは手を振って否定した。
「冗談は止めてくれ、軍隊至上主義者など戦争賛美者だろう、おぞましい限りだよ。おそらくは仲間同士の庇いあいだろうと私は見ている」
まあ嘘ではないだろう。

我々の会話が一段落したと思ったのだろう。ボロディン本部長が話し始めた。
「アラルコン少将は三日前から艦隊の訓練に入っていました。しかし訓練予定宙域はフェザーン回廊の同盟側の宙域です。紛争が起きている場所ではありません」
ボロディン本部長の言葉にトリューニヒトの顔を見た。トリューニヒトは厳しい表情で何かを考えている。

「ボロディン本部長、訓練の場所というのはそんな簡単に変えられるのかね?」
「議長、それは有りません。フェザーン回廊は民間船も多く通航します。訓練の場所は予め周知し、民間船が紛れ込まないようにする必要がありますから、簡単には変更できないのです」

「つまりアラルコン少将が独断で訓練の場所を変更したと言うのかね?」
「おそらくはそうでしょう。ルフェーブル中将も驚いていました」
独断か……。少なくとも何らかの陰謀ではない、そう考えて良いという事か。

「それでボロディン本部長、他には?」
「レベロ委員長、ルフェーブル中将によればアラルコン少将はこちらの撤退命令に対して戦闘中で撤退できる状態ではないと答
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