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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十一話 紛争
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貴族連合軍の逃亡兵以外に可能性が有るとすれば自由惑星同盟軍しかない。しかし、今帝国と同盟はフェザーン方面では協定を結んでいる。フェザーンに同盟軍はいるが、帝国方面には艦隊を移動させる事は出来ない。捕虜交換を行なうべく準備を進めている今、同盟軍が協定を破るとは思えない。だがもし連中が同盟軍なら厄介な事になるだろう……。

沈黙を破って少将が口を開いた。
「おそらく同盟ではないでしょうか」
「卿もそう思うか」
「はい」
思わず溜息が漏れた。

「オペレータ、スクリーンに映せるか」
「まだ少し遠すぎます」
レーダーの反応が良すぎる、おかげで相手の確認が出来ないとは皮肉なことだ。俺がアーベントロート少将を見ると少将は何も感じていないかのように平然としている。なるほど、実戦経験が少ないから分からないか……。

「閣下、敵艦隊、速度を上げこちらに近付いてきます!」
勝手に敵と決め付けるな! オペレータの報告に内心で毒づいた。しかし速力を上げて近付いてくる。敵と判断しても可笑しくない。

「閣下、ワルキューレを偵察に出しては如何でしょう」
「相手を確認するためにか?」
「はい」
アーベントロート少将が偵察を提案してきた。敵を確認する、その一点では正しい、しかし……。

「いや、駄目だ。もし連中がそれを挑発行為、戦闘行為と判断して攻撃してくれば、それがきっかけで戦争が始まりかねん。その所為で捕虜交換が吹っ飛んだら、卿も俺も捕虜の家族に殺されるぞ」
俺の言葉に少将は顔を強張らせた。

「向こうから戦闘を仕掛けてくるでしょうか?」
「向こうは領域侵犯をしている、何が有っても不思議ではない」
「なるほど……、では如何します?」
どうするか、あまり有効な手段は無い。

「オペレータ、本隊に連絡しろ。正体不明の艦隊、二千隻を発見。おそらくは自由惑星同盟軍と思われる。時間、座標も忘れるな」
「はっ」

「全艦に命令、第一級臨戦態勢を取れ!」
「はっ」
俺の命令にアーベントロート少将が不安そうな表情を見せた。
「念のためだ、少将。備えだけはしておこう」
少将は頷くと躊躇いがちに口を開いた。

「閣下、艦隊を後退させては如何でしょう」
「後退か……、そうだな、それがいいだろう」
戦闘回避を第一に考えるか、悪くない。逃げるなど普通は提案し辛いものだがこの場合は正しいだろう。

俺は艦隊に後退命令を出した。艦隊が少しずつ後退する。但し全速ではないから敵との距離は少しずつ縮まっていく。相手が同盟軍だと判明したなら敵との距離を保ちながら警告をする事になるだろう。戦闘が許されないという事がこんなにも厄介なことだとは思わなかった。

「閣下、本隊より連絡です。相手の正体を突きとめよとのことです」
オペレー
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