第6章 『八神はやて』
第49話 家族が増えるよ!! やったねはやてちゃん!
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示していた。順調に育っていけば、世界の命運さえ握れたかもしれない。悪魔を倒し、ドラゴンと戦う。そんな未来があったかもしれなかった。
父の体を水色の光が包み込む。光が消えると、そこには傷が癒え意識を取り戻した父の姿があった。おとうさん! と喜んで少女は抱き着く。
状況がつかめず目を白黒とさせる父だったが、唐突に視線を鋭くする。何かが接近してくるのを感じる。これはそう、悪魔の気配――それも魔王クラスの。
父は落ち着いた声音で、クローゼットの奥に隠れるように娘に指示した。少女は父の言葉を疑うことなく笑顔で従う。父が帰ってきたことで上機嫌だった。
最後に、少女の頭をひとなでしてクローゼットの扉を閉めると、天使陣営に伝えられている特殊技能<六式>を使い、生身で空を飛んでいく。――――その先には、魔王サーゼクスの姿があった。
<六式>使いの元エクソシストと魔王サーゼクスの戦いは熾烈を極めた。悪魔が自分と娘を殺害しにやってきたと信じている男は決死の抵抗を試みる。
一方、サーゼクスは戸惑っていた。急な魔力の高まりを感じて現場に急行してみたら、凄腕のエクソシストが臨戦態勢で待っていた。決して逃げることなく格上のサーゼクスに挑むエクソシストは鬼気迫る表情をしていた。
エクソシストは一歩も引かずに戦うが、実力の差は明らかだった。
好奇心は誰にだってある。クローゼットの奥に言いつけ通り隠れていた少女は、図書館の本を読みつくすほどの好奇心旺盛な子供だった。
父が何かと戦う気配がしていたが、彼女の中では既に敵を倒した父と二人で遠くに逃げて、何をしようかなと考えていた。紫藤ナントカには同い年の娘がいるらしい。一緒にくらすのだから、家族が増えるのだ。それは決定事項だった。
だから、だから、好奇心から戸を開いて外を覗いた。だって、おとうさんが勝つのだから。彼女の瞳に映るのは、
――――消滅の魔力を浴びて消えていく父の姿だった。
少女―?―?八神はやての絶叫が闇夜の駒王に響き渡った。
◆
「珍しく機嫌がよさそうだな」
「ん? コカビエルか。駒王町に隠れていた裏切り者の処分がどうなっているのか気になってな。さて、けしかけたはぐれ悪魔はうまくやっているかどうか」
堕天使総督は嗤う。自らの謀略がうまくいくことを確信していた。
彼は知らない。ジュエルシードというイレギュラーを。
彼は知らない。八神はやてという存在を。
彼は知らない。たまたま魔王サーゼクスが滞在していたことを。
彼は知らない。次元震が世界を丸ごと滅ぼせることを。
彼は何もしらなかった。
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