第42話『違和感の正体』
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を見せてくるユヅキに、場違いながら晴登は照れる。
先の言葉もそうだが、どうにも晴登は詰めが甘い。人を焚き付けておくだけおいて、結局は尻込みしてしまう。
でもだからこそ、今のユヅキの言葉は晴登の迷いを断てた。
晴登は一瞬黙り込んだが、
「頼んだよ、ユヅキ」
「お互い様だね、ハルト」
2人はウォルエナを向く。いつしか震えは止まっていた。
標的を見据えるその表情──それからは、互いへの信頼が見て取れた。
肌にしみる冷気。それは隣の少女から伝わってくる。
頬を撫でる風。それは隣の少年から伝わってくる。
「それじゃ、いくぞ!」
「グルッ…!?」
晴登によって巻き起こる強風が、ウォルエナの身体を包み込む。
あらゆる向きから吹く風に、ウォルエナは行動を封じられ、為す術なく停滞した。
「ユヅキ!」
「うん!」
その隙にユヅキが造り出すのは、拳サイズの氷塊。
必殺には物足りないが、脅すくらいならば充分な大きさだ。
それを見たウォルエナの瞳が、若干揺らぐ。
「いっくよー!」
氷塊が無抵抗な魔獣へ一直線に射出される。
その間も氷に触れる空気は凍みていき、白い軌跡を描いていた。
「ガウッ!!」
ウォルエナは最後の足掻きとして、練魔砲を放つ。黄色い光の光線だった。
だが威力はユヅキに劣っており、氷塊は練魔砲を打ち破りながら直進する。
刹那、ウォルエナの眼前で氷塊が弾けた。
しかしウォルエナの仕業ではない。ユヅキの意図だ。
晴登が起こしていた風に弾けた氷片が触れることで、ウォルエナの周囲を渦巻いていた風がたちまち凍りつく。
つまり、ウォルエナを氷に閉じ込めたのだ。
「一丁上がり…か?」
「さすがに動けないと思うけど…」
恐る恐る近づいてみたが、ウォルエナに動きはなし。どうやら完全に氷漬けになっていて、拘束できているらしい。
その事実を悟った2人は盛大に息をつく。
緊張の糸が切れ、晴登は勢いでその場に座り込んだ。
「もうダメだ、疲れた〜!」
「ちょっとハルト、緩みすぎ」
服の汚れを気にせず寝転ぶ晴登。眼前に人喰い魔獣の氷像がいるにも拘らず、かなりの緩みっぷりだ。
だが仕方ない。それだけの緊張感だったのだから。
そんな晴登を見て、ユヅキは密かに笑みを浮かべていた。
*
「すごい慌てようだな」
「いや、ハルトが楽観しすぎなの。最初はビビってたくせに」
「あれ、記憶にないな〜」
気楽なやり取りをしながら、晴登たちはラグナの店へ向かう。
ちなみに“慌てよう”というのは、ずばり関所の門兵のこ
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