巻ノ六十八 義父の病その十一
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「酒をじゃ」
「節制することはですな」
「心に留めておくことじゃ」
「わかり申した」
「その通りじゃ、酒はな」
「毒にもなるからこそ」
「控えることも」
幸村に言うのだった。
「覚えておくことじゃ」
「では」
「いざという時になれば」
まさにその時はというのだ。
「控えよ、よいな」
「そしてですな」
「存分に戦いな」
「死ねというのですな」
「武士としてな」
「そうします」
「ではな、今宵は飲んでもよい」
この日はいいというのだった。
「共に飲もうぞ」
「それでは」
こうしてだった、義父と義息子は二人でこの夜はかなり飲んだ。そして翌朝大谷は朝飯の後で娘に会いそれから秀次のいる聚楽第に向かった。
その父を見送ってからだ、竹は難しい顔で言った。
「父上は」
「わかったな」
「はい、病になられても」
「それでもじゃ」
「お務めを続けられますか」
「言った通りじゃ」
竹自身にだ。
「倒れるまでな」
「そうですか」
「安心せよ、まだな」
倒れるまでにはというのだ。
「暫く時がある」
「それでは」
「また会おうぞ」
頭巾を被っているが目を綻ばせての言葉だ。
「都にも上がるからな」
「では」
「またな」
「はい、それでは」
竹は父を笑みで送った、そしてだった。
大谷は聚楽第に向かった、竹は幸村と共に父を見送った。だがそれが終わってからだった、竹は夫に複雑な顔で言った。
「やはり」
「どうしてもな」
「はい、お病のことが」
「病が進まれるには暫く時があるが」
「それでもですね」
「あの病はな」
業病、それはというのだ。
「難しい病じゃ」
「左様ですね」
「しかしな」
「父上はああした方です」
「病でもじゃな」
「常に前を向いておられます」
大谷、彼女の父はというのだ。
「そうした方です」
「まことにな」
「私はいつもです」
「拙者のところに来るまではか」
「父上に大層可愛がられて育ちました」
「そうであったか」
「はい、兄上達も」
彼女の兄達もというのだ。
「常にです」
「可愛がられてか」
「そして大事なことはです」
「全てか」
「教えて頂きました」
「そうであったか」
「優しくそれでいてです」
尚且つというのだ。
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