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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十九話 内乱終結後(その3)
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うとそれは自由です。爵位が命より大事だと仰るならその道をお勧めします」

エーリッヒがにこやかに話す。皮肉を言っているのだろうがとてもそうは思えない。考え込んでいるラートブルフ男爵には気付く余裕は無かっただろう。
「忠告しておきますが、帝国は宇宙を統一します。亡命は賢明な選択とは言えませんね。惨めな死を迎えかねない」

「私に平民として生きろと言うのか」
「それが一番安全な道だと思います」
ラートブルフ男爵が顔を歪めた。屈辱なのだろう、両手を握り締め俯いて唇を噛み締めている。

「私に平民として生きろと、そんな事が出来ると思うのか、ヴァレンシュタイン? 」
搾り出すような男爵の声だった。

「誇りの問題ではない、現実に生きていく事が出来ると?」
「……難しいでしょうね。あっという間に没落するかもしれない。しかし上手く生きていけるかもしれない……。私には分からないことです」
「何故殺さない、辱めるのが目的か、傲慢にも程が有るぞ! ヴァレンシュタイン!」

部屋に沈黙が落ちた。男爵は俯いて唇を噛み締めている。エーリッヒは俺を見ると首を横に振った。男爵を哀れだと思ったのか……。
「貴族としてでなければ生きていけませんか」
「そうだ、私を軽蔑するか、ヴァレンシュタイン。しかし私は他の生き方を知らん、ラートブルフ男爵としてしか生きられんのだ」

また部屋に沈黙が落ちた。ラートブルフ男爵は俯いている。これまで門閥貴族に哀れさなど感じた事は無かった。しかし今は彼らを哀れだと思う。そして自業自得だとも。

「殺せ、ラートブルフ男爵として私を殺してくれ」
「……残念ですが、それは出来ません」
「私を殺してくれ、ヴァレンシュタイン!」
振り絞るような男爵の声だった。

「帝国に協力するならば貴族としての地位を保証しましょう。どうです」
「協力だと、私に何をしろと言うのだ」
これからエーリッヒが何を提案するかは分かっている。正直気が進まなかった。出来れば止めたい、おそらくエーリッヒも同感なのだろう、無表情にラートブルフ男爵を見ている。

「男爵をフェザーンに追放します。他の捕虜の中にもフェザーンに向かう人間が居るでしょう。向こうにはランズベルク伯、シャイド男爵もいます。その動きを探って欲しいのです」
「……」
ラートブルフ男爵は無言でエーリッヒを見ている。

「やってくれるのであれば爵位の保持を保証します、領地もです。但し領地はこれまでとは別の領地になりますし当然ですが税は払って貰います。政府の方針にも従ってもらう。これまでのような自由はない……」

ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が滅んだ事で貴族達の力は失われた。ラートブルフ男爵がこれまでのように力を振るおうとしても一人では無理だ。そして税を払うと
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