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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 36
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ええ。『ビコロール』です」

 近くに控える騎士達にも聞き取れなかった王子の言葉をなぞり。
 イオーネと腕を絡めたままのアーレストも頷く。

「よしっ! 予想してた中じゃ一番面倒くさいが、気分は最良の選択肢だ。あいつもそろそろ限界だろうし、もう良いぞ、アーレスト。私が許可する」

 体の正面をイオーネとアーレストに向け。
 清々しい笑顔で、右手をヒラヒラと泳がせるエルーラン王子。

 一方のアーレストは、眉を寄せて怪訝な表情を作った。
 邪気なんか微塵もありません! と主張する満面の笑みを、しばらくの間じぃーっと見つめ。
 やがて、諦め混じりのため息を溢す。

「一応、念の為に確認しますが……『女神アリアの憂愁(ゆうしゅう)は』?」
「『我らの罪と心得よ』。オニーチャンを信じなさい!」

 エルーラン王子が、白い歯をキラリと光らせ。
 親指が立った左拳を前面に突き出した、瞬間。

「…………────っ??」

 イオーネの体が宙を舞った。



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