暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 36
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与えられる。
 疑問はやがて真相への道を拓くだろう。

『反アルスエルナ派の勢力の志気発揚(しきはつよう)に最低限必要な義賊の情報は、条件が揃えば、義賊本人の生死を問わない』

 シャムロックは、たまたま生き残っただけ。
 生き残って、敵の口内に自ら飛び込んだだけだ。
 そして今。
 エサを求めるバーデル軍は、()()()()()()()()()暗殺組織と対峙してる。

 アルスエルナを荒らした義賊達と加害者を(かくま)う権力者、義賊の被害者達が勢揃いした、この場所へ誘われながら……

「────────────っ!」
「ミー…… ??」

 うずくまったまま無音で絶叫し、髪を掻き(むし)るミートリッテを見て。
 ベルヘンス卿が硬直する。

「まさか、()()

 彼は、蒼白く変色した顔をアーレスト神父へ向け。

「…………っ、リアメルティ伯爵!」

 一拍置いた後、ハウィスへ振り返り、声を荒らげる。
 びくりと跳ねた彼女は、不自然に揺れるミートリッテの背中を見つめ。
 突然、駆け出した。

「ダメ! ()()()()()()()()()、ミートリッテ!」

 ミートリッテの前に膝を突き、濡れた両頬を挟んで持ち上げる。
 覗いた白い唇は、はくはくと忙しく開閉するのみ。
 空気はまったく取り入れてない。

「ミートリッテ!」

(……声が聴こえる。自分のせいで、赤く染まった人達の声。優しい人達の悲鳴が……聴こえる……)

「た  て」

 ここに来ちゃ、いけなかった。
 指輪は盗むべきじゃなかったんだ。

「たす て」

 自分が存在する限り、アルスエルナは攻められる。
 きっと眠らされてた間にバーデルの国境警備隊にも顔を見られてるから、この場所で死んでも不自然だ。
 自分が今更何をどうしても、もう遅い。
 ただ、ここに居ることしかできなくて、そのうちバーデル軍が合流して、何もできないまま戦争が起きて、みんなが傷付く。
 傷付いて、苦しんで、ハウィスが……()()()()()()……
 赤く染まって、土気色になって、冷たくなって…………
 ……嫌だ…………嫌だ! 嫌だ??

(誰か 誰か、お願い)

「……たす け…… てぇ……っ……」

 みんなを
 ハウィスを 助けて ??



「『     』……か」

 ふと。
 指先で自身の顎を撫でるエルーラン王子がボソッと呟き、小さく頷いた。
 ミートリッテ達に集まっていた視線の一部が、王子の顔へと移動する。


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