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真田十勇士
巻ノ六十八 義父の病その一

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                 巻ノ六十八  義父の病
 唐入りがはじまり大軍が続々と九州から海を渡っていっていた、幸村は九州から戻って来た十勇士達の話を聞いて言った。
「そうか、順調にか」
「海を進んでおります」
「城も大きなものを築いていますので」
「そこを拠点としてです」
「次々とです」
「それはよいことじゃ、しかしな」 
 幸村は腕を組んで言うのだった。
「やはり攻めるのはな」
「早かったですか」
「唐入りには」
「まだ、ですか」
「天下の政が治まりじゃ」
 そしてというのだ。
「明がな」
「より腐り、ですか」
「どうにもならなくなってからですか」
「攻めるべきであった」
「そうなのですな」
「腐った家は壊しやすい」
 幸村は家に例えて話した。
「しかもこちらが万全なら余計にな」
「家を壊しやすい」
「だからですな」
「唐入りには早かった」
「そう言われますか」
「太閤様は焦っておられる」
 秀吉、彼はというのだ。
「ご自身の寿命が短いと思われていてな」
「実際に五十過ぎですし」
「それで、ですな」
「仕方ないと言えば仕方ない」
「そうしたことですな」
「太閤様のお気持ちを考えるとな」
 それもというのだ。
「仕方ない、しかし戦の時はじゃ」
「見誤ってはならない」
「特に攻める時がですな」
「こちらが勝てる様になり相手が負ける時に攻める」
「そうしなくてはですな」
「しくじる」
 そうなるというのだ。
「だからじゃ」
「この唐入りはまずいですか」
「加藤殿、小西殿が先陣を切られてです」
「それからも大軍が進んでいますが」
「それでもですな」
「徳川殿か前田殿、出来れば太閤様ご自身が出られたなら」
 そうすればというのだ。
「違うが」
「今でもですな」
「勝てる」
「そうなのですな」
「あの方ならな、しかしな」 
 それでもというのだった。
「それは出来ぬ」
「太閤となられ」
「天下人として確かになられたので」
「最早ですな」
「ご自身が出られることは無理ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからこの戦は危うい」
「しくじる」
「そうなりますか」
「そう思っておくことじゃな」
 こう言うのだった、都において。
 そしてだ、幸村は十勇士達にあらためて言った。
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