ブリューヌ・ジスタート転覆計画編
第14話『還らぬ者への鎮魂歌〜新たな戦乱を紡ぐ前奏曲』
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へ突っ込むはずだ……)
今の凱の視界は、まるで地図をそのまま眺めているかのようだ。雲が一帯晴れている今、ブリューヌ全土、ジスタート、ムオジネル、ザクスタン、アスヴァールが見える。
凱は飛翔を停止させ、遺された風の力を全て背面に回し、『最高速度』にて、目的地へ急降下しながらアリファールに語り掛けた。
乱れる気流が、凱の長い栗色の髪をかき乱す。
「……アリファール」
問い返すように、銀閃は凱の頬を撫でる。
「遅くなって……すまなかった。みんなの声に……気づいてやれなくて」
そんなことない。そう思わせる優しい風が、今度は凱の頭をくるくる撫でる。
ブリューヌの異端審問にて、凱は魂を引き裂かれるような苦しみを味わった。この世界に、この時代に、この体に、『異端』ではなく、ガヌロンのような『異物』が含まれている。それを理解した時、凱の中で何かが終わった……いや、終わったかに見えた。
自分自身と向き合う。それは言葉で言いあらわすより、とても勇気がいることは間違いない。過酷な運命を乗り越えることが、勇者として避けては通れない道。その道に、凱はつまずいて、膝小僧をすりむいて『正道』を歩けなくなっていた。
だが、今は違う。
凱とアリファール。出会いは唐突にしても、互いにその存在を感じ合っている。竜具の暖かい手触りさえあれば、どんな事態も乗り越えていける。どんな苦難も薙ぎ払っていける。――凱はそう思った。決意を勇気に変える凱に、アリファールは感謝の風をかける。
「君の大好きなご主人様は……必ず助けて見せる!」
勇者は一つ、アリファールに約束をした。これから増えていく約束の内の、ほんの一つ。
アリファールは自嘲するかのような、そよ風を巻き起こす。
流星は燃え尽きる前に願えば、必ず叶えてくれると言われているが、流星たる竜具自身が願いごとをするとは思わなかった。
そんなアリファールの意思が手のひらから伝わり、凱は微笑みかける。
「気にしないでくれよ、アリファール。勇者は……みんなの『希望の流星』だもんな」
急降下による大気との断熱圧縮が、凱の肌に伝わっていく。望むだけの熱を抱きかかえ、時代はさらに加速していく。
――流星が、ヴォージュ山脈の彼方へ舞い降りていく――
『ブリューヌ〜ジスタート・ディナント平原』
――その頃、銀の流星軍は絶望の渦中に置かれていた――
「カルヴァドス騎士団、ペルシュ騎士団、リュテス騎士団、壊走!」
「軍損耗率!8割を超えています!」
「右翼部隊、壊滅!」
銀の流星軍の『本陣』では、絶望的な報告ばかりが飛び交っている。リムアリーシャは置かれた状況を見て歯噛みする。
味方の損害は甚だしく
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