ブリューヌ・ジスタート転覆計画編
第14話『還らぬ者への鎮魂歌〜新たな戦乱を紡ぐ前奏曲』
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「タイキケン……あの時、ガイは気流世界の事をそういっていましたね」
銀閃の力で空高く飛翔した凱を見送って、ヴァレンティナ――ティナは以前、独立交易都市で凱と交わしたやり取りを思い出していた。(第0話参照)
この虚影の幻姫は何も昔に感傷していただけではない。何故凱が大気圏ギリギリまで飛翔していったのか、既に意図を読み取っていた。
恐らく凱は、森林や山谷のような障害物のある陸地に沿って飛翔するより、障害物のない上空から急行したほうが手っ取り早いと踏んだのだろう。それにはるか上空からの急降下なら、重力に身を任せて余計な風の消費も抑えることが出来る。ブリューヌとジスタートを挟むヴォージュ山脈を越えることもできる。
『最短距離』と『最短時間』は決してイコールではない。壊滅寸前の可能性ある銀の流星軍へ手短に駆けつける為に、『最短時間』を選ぶのは必然だと言えよう。
いそがばまわれ――とは、よく言ったものだ。
大気ごと薙ぎ払え――すでにその大気の世界へ赴いている勇者ならきっと、混迷たる時代の暗雲さえも薙ぎ払ってくれる。
ヴァレンティナ=グリンカ=エステスは、そう信じていた。
さらに虚影の幻姫は、どうして竜具が戦姫たる女性ではなく、勇者たる男性に出現したのか、理由を考えた。
これは、ジスタートの始祖たる『黒竜の化身』が竜具に組み込んだ緊急処置なのだろう。
黒竜の化身に依頼された刀鍛冶は、深い混迷を続ける時代の対立が『魔弾の王と戦姫』の力を以てしても制裁できない最悪の状況に陥った際に、その状況を打開する為に『単体で圧倒的武力の異質と戦う事を想定』し、アリファールの性能を最大に引き出す人物を求める前提として、アリファールは設計された。そうであれば、凱の元へ出現した理由に納得がいく。
国家滅亡の最中、獅子王凱はアリファールを取り、時代という大気の流れを変えようとしている。
今まさに、獅子王凱はかつての大陸初の女王「ゼフィーリア」と同じ軌跡をたどっていた。
――勇者の助けを、待っている――
『ジスタート・オステローデ上空・大気圏層』
風影の高加速に平然と耐えながら、凱は自分の神経とアリファール本体の『戦闘情報』を接続したまま、はるか上空を突き進んでいた。こうすることで、自らの身体を推進機関に見立てて、大気圏内環境下を自在に飛び回ることが出来る。生機融合体から生機融合超越体に進化した凱ならではの能力だ。
アリファールを握っている……という感覚が今の凱にはない。『剣は腕の延長だと思え』という教えが存在するのだが、凱が『銀閃』を取れば文字通り、腕の延長となって振るわれるのだ。メカノイドとの融
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