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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十七話 内乱終結後(その1)
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彼らも帝国軍の情報を知りたがっている」
私が黙っているとトリューニヒトがさらに言葉を続けた。

「レベロ、亡命者が重大な事を言っている。イゼルローンから知らせがあった」
「?」
「国務尚書、リヒテンラーデ侯とヴァレンシュタイン元帥の間に対立は無い。彼らが権力を巡って争う事は無いそうだ」
「!」

信じられない言葉だった。リヒテンラーデ侯はあの改革を支持しているということか。門閥貴族を倒すための方便ではなく、真実帝国は変わるべきだと考えた……。何故だ、何故貴族であるはずの彼がそれを受け入れた? 判断する情報が欲しい、切実に思った。

「私はこれからヴァレンシュタイン元帥とリヒテンラーデ侯の間で権力争いが発生するだろうと思っていた。帝国の混乱は予想以上に早く収束しそうだ。我々の未来は決して明るくない、覚悟が必要だろうな」
そう言うとトリューニヒトは苦い表情でコーヒーを一口飲んだ。私もコーヒーを飲んだ、確かに苦い。


帝国暦 488年  5月 30日  オーディン  新無憂宮  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


「御苦労じゃったな、ヴァレンシュタイン」
「有難うございます、侯」
「随分久しぶりじゃ、懐かしいの。体はもう大丈夫か?」
おいおい、半年会わなかったからといって随分優しいじゃないか。らしくない侯に思わず苦笑が漏れた。

「負傷したのは半年も前の事です。もう問題ありません」
「そうか……、まあそうじゃろうの」
「はい」

宇宙艦隊は三月初旬にガイエスブルク要塞を落とすと中断していた辺境星域の平定を再開した。イゼルローン方面に逃亡した反乱軍はその殆どが降伏した。やはり帝国を捨てる事は出来なかったようだ。イゼルローン要塞に向かった者達はそれほど多くない。それら全ての後始末をつけ、辺境星域の平定が完了したのが四月上旬、そして宇宙艦隊がオーディンへ帰還したのが今日だ。

俺は反乱鎮圧の報告をエーレンベルク、シュタインホフの両元帥にした後、リヒテンラーデ侯に会っている。この後は陛下にそしてミュッケンベルガー元帥に報告しなければなるまい。二人にはラインハルトの事も話さなければならんだろう、少々気が重い……。

「宮中も寂しくなったの、大勢の人間がいなくなった」
心底寂しそうに呟くリヒテンラーデ侯に俺は頷いた。侯の気持は分かる、門閥貴族の殆どが死んだか亡命した。あの改革に賛成した貴族などほんの少ししかいない。いつもなら敵意も露わに俺を見ていた人間が殆どいなくなったのだ。確かに寂しい。

大体俺は今、リヒテンラーデ侯と侯の執務室で話しをしている。以前なら俺と侯が執務室で話すことなど出来なかった。門閥貴族の回し者が鵜の目、鷹の目で様子を探ろうとしただろう。今ではそんな心配をする事も無い。

主だった者で
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