暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
閣下のお散歩
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原因にあった。

いや、原因というのは若干語弊があるだろう。そもそもの原因というか起因というか、発端という点で言えば、ヴォルティス自身に非があるのだから。

まぁ、要するに――――

「むぅ、しかしあの量の書類は殺人的だと思うのだ」

まったくレンキの奴も困ったものだ、と愚痴るように原因を簡潔に完結させた筋肉は、唸りながら歩を進める。

ちなみに彼の唸りで隣をビクビク歩いていた一般プレイヤーの男の冷や汗が五割増しくらいになったのだが、偉丈夫は気付かない。閣下の悩みはメテオ海淵より深いのだ。

もう端的に言ってしまえば、お仕事イヤだから逃げ出してきたダメな大人、ヴォルティスは追手(部下)の追随を振り切るために筋肉しか詰まっていない脳みそをフル回転させていた。

―――さすがに我が目立つのは自覚している。屋外を歩くよりは、その辺にある適当な喫茶店……できればあまり窓が大きくないか、大きくても中の様子が見えない磨りガラスの店に入るべきか……。いや、別の都市に飛行したほうが早いのではないか?

追い詰められたスパイのように唸りながら閣下の思索は続く。

ただでさえ、威圧感を与える風貌なのだ。これで、それこそGGOにいたら怖がられることもなかったろう。ヴォルティスに真後ろを歩かれている少女など、ほとんど半泣き状態だった。

―――いや待て。レンキから逃げてそこそこ経つ。時間からいって、ぼちぼちウィルやリョロウも合流する頃合いだろう。そうなれば、イグドラシル・シティの空も見張られ始めているかもしれん。

今飛行しても、我の首を絞めるだけだ、とヴォルティス卿は力強く頷く。

彼の背には、イグドラシル・シティを行きかう妖精九種族のどれにも当てはまらない光の翅があった。

ヴォルティスはなぜかALO初ログイン時に選べるはずの九種族のどれにも当てはまらない、本当ならかつて世界樹の天辺に辿り着いた者だけがなれる《光妖精(アルフ)》という上位種族になっちゃってるのだ。

それゆえに彼は《孤独な領主(ソーサリー・キング)》などと呼称されるが、ヴォルティス自身は他からの評価など特に頓着していない。

評価は他人から付けられるモノではない。自らの手で創るモノだ。とは彼の言だ。

閣下は凡人の感覚とは違うのである。

「…………む」

思考の迷宮の中に陥りそうになっていた脳筋(バカ)は、そこで腹の辺りに軽い感触を得た。

もっともこの場合、軽いというのはヴォルティス卿視点のことで、相手からしたらダンプカーと正面衝突したようなものだったのかもしれない。

その証拠に、天高くそびえる偉丈夫にぶつかった猫妖精(ケットシー)の少女は派手にブッとんで、NPC経営の果物屋の軒先に頭から突っ込んでいた。山と積まれていた色と
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