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星がこぼれる音を聞いたから
9. パンプキンパイと深煎りコーヒー
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皿の残りが五枚ほどになった時。飛鷹が皿を拭く手を止め、俺の顔をジッと見ていたことに気付いた。彼女の顔からは、いつの間にか笑顔が消えていた。

「……提督?」
「ん?」

 その水晶のように美しく澄んだ瞳は、俺の瞳に真っ直ぐに向けられていた。

「隼鷹……お願いね?」

 なんだかその言葉には、儚さや悲壮を含んだ覚悟……そんなものが込められているような……そんな気がした。

「……なんでそんなことを言う?」
「妹のことを提督にお願いしちゃいけない?」

 違う。妹を案じる姉の心だけではない何かが、きっとさっきの言葉にはこもっている。そんな気がする。だから俺は、飛鷹に言葉の真意を聞かずにはいられなかったんだ。

「……ホントはね、隼鷹にも黙ってたけど、私ずっと夢見てたの」
「?」
「ドレス着て、晩餐会に出席して、ダンスを踊って……今はこうやって戦いに身を置いてるけど、いつの日か必ず……そう思ってたの」
「んじゃあの時……本当は自分が行きたかったのか?」
「うん……隼鷹が心底うらやましかった。私もあのドレスを着て、あなたと晩餐会に出たかったわ……」
「……」
「でもね。あなたと隼鷹を見て、気が変わった。あなたのためにがんばる隼鷹と、その隼鷹に楽しそうに振り回されてるあなたを見て思ったの」
「……」

 この時の飛鷹の笑顔を、俺は忘れることはないだろう。いつぞやの小春日和のような笑顔だったが……

「“この人は、私の弟になるんだなぁ……この人が選んだのは、私じゃなくて隼鷹なんだなぁ……”って」

 その暖かい笑顔には、秋風が吹いていた。冷たさが心地いいけれど、春の心地いい風とは違う気持ちを運んでくれる、少しだけ冷たい秋風が吹いていた。

 冷たい秋風が吹く笑顔のまま、飛鷹は俺から視線を外して、再び皿を拭き始める。先程よりも、ゆっくりと丁寧に皿を拭く飛鷹の顔を、俺は見ることができなかった。お互いに顔を見ず、自分が手にした皿に視線を落として、俺達は皿洗いを続けた。

「だから提督……私の妹を……隼鷹をお願いね?」
「……ああ」
「浮気しちゃダメよ? 私の妹を泣かせちゃダメよ?」
「約束する」
「ちゃんと隼鷹を幸せにするのよ?」
「任せてくれ」

 最後の皿を洗い終わり、そして最後の皿を拭き終わった俺達。手を洗い、頭の三角巾を外して割烹着を脱いだ俺は、食堂を見た。……隼鷹はまだ来てないようだった。

「……じゃあ私はそろそろ戻るわ」

 布巾を物干し場に干した飛鷹は、そのままこちらに顔を見せずに厨房の出口の方へと足早に向かっていった。

「飛鷹!」

 たまらず声をかけた。ピタリと足を止めた飛鷹の肩は、少しだけ震えていた。俺にはその両肩が、ひどくもろくて弱々しく見えた。支えてや
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