巻ノ六十七 関白秀次その八
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幸村と十勇士達を見てだ、笑みを浮かべてこうも言ったのだった。
「御主達の力も借りたい」
「それがし達もですか」
「ここまでの話を聞いてわかった」
それもよく、というのだ。
「御主も家臣達もまことの武士、だからな」
「それ故にですか」
「御主達の力も借りたい」
是非にというのだった。
「その時はな、よいか」
「関白様がそう言われるのなら」
「真田家自体もじゃ」
幸村だけでなくというのだ。
「その力も借りたい」
「さすれば」
「戦の時は御主達も呼ぶ」
己の下にというのだ、秀次ははっきりと言った。
「その時は働いてもらう」
「では」
「期待しておる」
笑みを浮かべてまた言った秀次だった。
「御主達にはな」
「では微力ながら」
幸村も秀次に応えて言った。
「働かせて頂きます」
「そうしてもらう、ではこれからじゃ」
「これからとは」
「茶を飲むか」
「茶を」
「うむ」
それをというのだ。
「皆で飲むか」
「これより」
「こうして話をしたからな」
それでというのだ。
「時間もある、茶も共に飲むか」
「宜しいのですか」
「こうした時の遠慮は好かぬ」
静かな微笑みでだ、秀次は幸村に返した。
「だからじゃ、これからな」
「では茶を」
「飲もうぞ」
こう話して幸村主従は聚楽第の茶の間に案内されそこで秀次と共に茶を飲むこととなった、茶は秀次自らが煎れたが。
茶を出してからだ、秀次は幸村にこんなことを言ったのだった。
「わしの茶は利休殿に教えて頂いた」
「利休殿ご自身にですか」
「それで今もな」
「この様にしてですか」
「茶を煎れておる」
「そうですか」
「そしてじゃ」
さらに話す秀次だった。
「こうして飲んでおる、ついこの前までな」
「利休殿がですか」
「おられたが。言うまい」
そこから先はというのだ。
「とにかく茶を飲もう」
「それでは」
「そもそも茶もな」
この飲みもの自体もというのだ。
「幼い頃は飲めるなぞ思わなかった」
「関白殿が幼き頃は」
「さっきも言ったが百姓の出じゃ」
豊臣家自体がというのだ。
「しがない、茶はおろか食うこともわからなかった」
「それが、ですか」
「こうして茶を飲めること自体がじゃ」
それこそというのだ。
「夢の様な話じゃな、しかし武士になったなら」
「それならば」
「御主の言った通り武士として生きてな」
そしてとだ、秀次はさらに言った。
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