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星がこぼれる音を聞いたから
8. ポリッシュと布
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部変色しているのは、炎で炙られたからか……あと全体的に黒くくすんでいる。

「よし……ここで出番か……」

 店主から借りた布に、同じく店主から借りたポリッシュとかいう液体を垂らしてみた。白い液体が布の上にこぼれ、染みこんでいく……

 急いで指輪をその濡れた部分に置き、そして静かに磨き始める俺。数分磨いたところで、指輪の様子を見た。

「……ぉお」

 指輪は本来の輝きを少しだけ取り戻したようで、先程よりは輝いて見える。

 ……でも、まだ星には程遠い。

 再度ポリッシュを布の上に取り、それで指輪を磨く。ポリッシュの水分が布を通して俺の指に冷たさと指輪の汚れを移していった。

「……」

 ある程度磨いたら布を開いて指輪の輝きを確認し……再度また磨いて……その繰り返しだ。何度も中身を確認し、そして繰り返し磨き続ける。

「……」

 執務室でたった一人、指輪を磨き続ける俺。頭の中に、不意に隼鷹の声が響いた気がした。

――もらっちゃおうか

 布を開いて指輪を見る。ポリッシュがついた布に汚れを移した指輪は、少しずつ少しずつ星の輝きを取り戻しているようだ。

――ありがと……冗談でも任務でも、うれしいよ

 なあ隼鷹? お前、俺の薬指に指輪を通した時、たしかにそう言ったよな? 口には出してないかもしれないけれど、俺の耳には届いたぞ? 星がこぼれる音と一緒に。

 指輪を磨き続ける。力を入れず、丁寧にゆっくりと。でもこびりついた汚れがキチンと落ちるように適度な力で。

――はじめまして。飛鷹型航空母艦の隼鷹と申します

 お前あの時、一瞬だけ俺の方見て嬉しそうに微笑ってたよな? なんでだ?

――隼鷹さんはあんたに似合う淑女だよー……
  なんせ必ず帰ってくるからねー……

 そうだな。ヒドい怪我を負っても、ちゃんと帰ってきてくれたな。榛名や神通、瑞鳳や鳳翔……戻ってこれなかったみんなとは違って……ちゃんと俺の隣に帰ってきてくれたな。

―― このまんまさ。どっか行こうよ

 お前あの時、どんな気持ちだった? 俺にどう返事して欲しかった?

――……あたしでよかったの?

 お前がそのセリフをどういうつもりで言ったのか、俺は知らない。けど、お前からしか星がこぼれる音は聞こえない……俺は、お前の横で、お前から聞こえるその音が聞きたいんだ。

―― 大丈夫。あんたの淑女の隼鷹さんは、ちゃんと紳士のもとに帰ってくるよ

 待ってるよ……待ってる。だから早く俺の隣に帰ってきてくれ。また俺の耳に、星がこぼれる音を聞かせてくれ。

 言葉を発さず他のものを見ず、俺はただひたすらに指輪を磨き続けた。そして……

「……よし」

 夜9時を回った頃……指輪が
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