第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
17話 居場所という詭弁
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あろう選択を、俺は躊躇わなかった。自分のエゴで命を奪った。
加えて咎を受け止めて苦しむ真似事を無意識で演じるところに、尚のこと救えない愚かさを感じるほどに、俺は歪んで壊れている。
そしてこの異常は、突発的に発生したものではない。
このデスゲームが始まって、ヒヨリに死の危機と隣り合わせの日々を押し付けてしまった罪悪感。
このデスゲームを終わらせ、ヒヨリをデスゲームから解放して日常に戻さんとする使命感、強迫観念。
いつしか、ヒヨリの周囲に形成された仲間の輪も損なわれぬよう、安息の場に瑕を付けぬよう、気付けば守らねばならないものが増えていった。多くのタスクを管理するシステムがロジックエラーを引き起こすように、俺は歯車を歪ませてしまった。
そうなって、気が付けば手段を択ばなくなった。倫理的な呵責にとらわれることなく、葛藤というプロセスを踏み倒し、ただ保存するという意味合いでの最適解に従って行動するようになった。後に苦しむにせよ、それさえも度外視できる程度には、俺は人道を外れているのだから。
「………それで、全部?」
そして、不服そうな一言。
「全部話したさ」
「また嘘ついた。じゃあ聞くけど、………どうして、そんなことしなくちゃいけなかったの?」
糾弾ではなかった。しかしその追求に対する返答を、俺は即座に話せなかった。
想定していた展開と、あまりにも違っていた。人道を外れた行いに讒言を受けて、あわよくば俺は見捨てられて独りになる。これを機にヒヨリと袂を別とうとさえ思っていた所為か、そうなれば良かったのにとさえ願ってしまう程度にはくたびれた俺の思考は呆気なく外れたことになる。
「だって、燐ちゃんは理由が無かったら、そんなこと絶対しないもん。燐ちゃんが、その………嫌なことをするときは、誰かの為にとか、そういう時だけだもん。燐ちゃんがやったことは、辛いし、とっても怖いよ。けど………それだけ大きな事情が無いと、おかしいもん」
やはり、敵わない。
長い付き合いだから培った情報ではない。むしろそれに頼っては、今の俺を測れないだろう。
ただ、目の前の相手に向き合う。それをどこまでも突き詰めた果てにある、常軌を逸した《真摯さ》が、ヒヨリの口からあの問いを告げさせた。
これまでの先入感に頼らず、殺人という行為にただ漠然と恐怖を抱かなかった、ヒヨリの強さをどこかで侮っていたのかも知れない。或いは、本質を見誤っていたか。
一緒に戦うと、確かに言われたのに。
一緒に帰ろうと、確かに言われたはずなのに。
俺からその約束を反故にするところだったと思うと、なんとも遣り切れない。
「………友人を、助けようとした。旦那さんの惚気話を気軽に話す人で、聞いていて面倒だ
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