真最終話 変わりゆく運命
前編 変わる未来、新たな旅立ち
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が帝国に行くというなら、同行して護衛するしかない。違いますか?」
「……」
真剣な眼差しで、こちらを射抜く姫君の碧眼。その宝石と視線を交わし、ダタッツは言葉を失ってしまう。
物々しい装備に身を固めた姫騎士は、これから戦に赴くかのような佇まいで、彼の後ろに跨っている。その年不相応に発育している肢体を――隙間なく、男の背に密着させて。
さらに、決して離すまいと両腕を絡めて、ダタッツを後方から抱きしめていた。その温もりと、少女のものとは思えぬ色香に耐え切れず、黒髪の騎士は思わず彼女から視線を外してしまった。
「……何も、姫が直々に来られずとも……」
「あなたはどうやら、行く先々で女性にちょっかいを掛ける、ふしだらな殿方のようですからね。帝国で粗相をすることがないよう……わたくしが監視せねばなりません」
「そ、そのようなことは……」
「それに。フィオナ皇女殿下にも、直に報告すべきでしょうから。――もう、この方はわたくしのものであり、わたくしはこの方のものなのだと」
そこへ追い討ちをかけるように、ダイアン姫は胸や腹、脚を擦り付け、耳元に甘い吐息を吹き掛ける。まるで、自分の香りをマーキングするかのように。
――他の女を寄せ付けまい、とするかのように。
さらに、彼女は挑戦的な笑みを浮かべ、帝国の方角を見つめている。大国の皇女からダタッツを――勇者を奪うと宣言した彼女の瞳は、かつてない情熱を帯びていた。
焼け付くような煌めきを放つその眼にたじろぎながら、ダタッツは助けを求めるようにヴィクトリアを見遣る。だが、剣にのみ生きた女騎士には刺激が強過ぎたのか――彼女は真っ赤な顔を両手で覆ったまま、顔を伏せていた。
……どうやら彼女が知らないうちに、この姫君は大人に近づき過ぎていたようだ。
「ダ、ダイアン姫。あまり無茶は……んっ!?」
「ちゅっ……ん、ぁ、れうっ……」
「ん、ん……」
そんな彼女を宥めるため、振り返ったダタッツは――またしても、彼女に唇を塞がれてしまった。
しかも、今度は唇同士が軽く触れ合うだけでは済まされない。彼女の舌はダタッツという男を知ろうと、彼の口内に押し入り――じゃれる猫のように、ねぶるのだった。
抑え続けてきた想いが、枷を失い弾けたためか。彼女の求愛は、それまでの素っ気ない装いからは想像もつかない情熱を纏っている。
その身を焦がすような熱に、ダタッツも――彼女自身も、翻弄されているようだった。
「んぷっ、はぁ……ん……。ダタッツ、様……もう、独りには……」
「……」
それから、数秒。ようやく彼から唇を離した彼女は、透明な糸を引いていた口元をそのままに、再び愛する騎士に身を摺り寄せた。
今まで戦い続けた分だけ、内側に押し込んできた「甘え」を、こ
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