肆ノ巻
御霊
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戦も覚悟しないと…。
でもはやく悠の話聞きたいんだよなぁ…。
よし。
あたしはするりと腕を伸ばし、それを高彬の首元にまわして、きゅっと抱きついた。あたしからの珍しい甘えるような仕草に、高彬が動揺したのか、その体が一瞬強張る。暫くそうしていた後で、あたしは極めつけとばかりに高彬の首元に頬をすり寄せる。高彬の腕に力が籠もる。およ、存外上手くいったかな?と思ったのだけれど。
「瑠螺蔚さん。…一体どこでそんなことを覚えてきたの。まさかとは思うけど…義兄上?」
高彬のひっくい声が聞こえた。
ピエッ!まずい逆効果!?しかも惟伎高にまでとばっちりが!
「いやっ、違う違う!何でそんなこと思うの!?あいつ僧だし!一応!」
しかしその時、救いの手は意外なところからもたらされた。
「そのくらいにしておいてあげてください、高彬どの。姫はわたしの妹の為にしてくれたのです。お気持ちは重々分かりますが、どうか、わたしと、我が義妹姫に免じて」
「…亦柾どの、そうは仰いますが、あなたは何もご存じでは無い。そもそもの元凶は全てその妹姫であって…」
「亦柾っ!」
あたしはブツブツ言う高彬をデーンと押しのけて立ちあがった。
そこには、まるで桜の葉のような青朽葉地宝相華顕紋紗の衣を纏った亦柾が立っていた。宝相華なんて、大輪の牡丹みたいな空想の花文様なんだけど、唐渡りだから大分古い紋だ。それなのにそれを全くヤボったく見せないどころか逆に爽やかにさらっと着こなしちゃうあたりがまぁ、確かに亦柾よ。
亦柾はにこりと笑って言う。
「螺蔚姫。お変わりないようで…いえ、お美しくなられましたかな。お亡くなられたと聞き及びこの亦柾、それではお供仕らんと胸は張り裂けんばかりでおりましたが誤報だったようで何よりです」
「そんな見え見えの世辞はいいから!あと螺蔚じゃ無くて瑠螺蔚ね、ル、ラ、イ。てゆーか、あんたがいるってことはここ、徳川家…!」
「いいえ?」
にこにこと微笑む亦柾が即座に否定する。
「丁度、北条に出向いていたところでして。ここは確かに徳川は徳川ですが、国分徳川。螺蔚姫のおっしゃる天地城にある本家では無く分家の方です」
「えっ、国分?石山寺の目と鼻の先じゃ無い」
「石山寺?そうですね」
ざり、とあたしに歩み寄ろうとした亦柾の間に剣呑な雰囲気の高彬が割り入る。
「亦
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