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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■???編 主人公:???■■
広がる世界◆序章
第六十八話 迷子
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第二外国語で学習したごく基本的なロシア語しか知らない。英語が通じることを祈りつつ、彼はまず挨拶をした。
「Hello, do you understand my words?」
 普段とはうってかわって丁寧な言い方である。彼の学んできた英語は生粋の学術英語(アカデミックイングリッシュ)で、訛りもなにもない。しいて言えば、日本人にしては珍しくイギリス英語(ブリティッシュイングリッシュ)寄りであったくらいだ。
 これで通じることを期待したのだが、彼女はもっと驚いた様子で口をぽかんとあけてしまった。通じていないようだ。仕方ねぇな、と彼は頭の中でひとり呟くと、どっかで聞いたことのある世界各国の挨拶をかなり怪しい発音で次々打ち出した。
「ブエナスタルデス? アッサラーム、アレイコム? ボンジュール? ええと、グーテンターク? ズトラーストヴィチェ。 くそ、これでもだめか。ちくしょうなんならいける?」
 知っている西洋言語は全滅だ。ダメもとでアジア言語に手を出そうとしたとき、彼は少女がおもしろそうに笑っているのに気付いた。いらいらして日本語で悪態をつく。

「笑いごとじゃねぇぞまったく。こっちがどれだけ苦労してると思ってんだ」
「だって、あなたの言葉、全然わかんないんだもん。どこの方言よそれ」

 彼は度肝を抜かれて、思わず二歩後ろに下がった。くすくすと笑っている少女が先ほど話したのは完璧な日本語だった。この環境、この容姿でまさか日本語が通じるとは。

「あなたはこの村の人じゃないわね。どこから来たの?」
「どこ、って――日本、から……?」
 彼は一瞬のちに、自分がなんておかしな発言をしたのかに気づいて赤面した。日本語が通じる以上、ここは日本の可能性が高い。しかし彼女は首をかしげた。
「二ホン? 聞いたことない。南の方の村?」
「いや、村じゃなくて国……」
「国……?」

 首をかしげる少女とは対照的に、彼はとんでもない驚きに打ちのめされていた。日本を知らない日本語話者などいるはずがない。
「悪いが、ここがどこか教えてくれねぇか」
「ここ? ここはルーリッド。ノーランガルス北帝国の最北端の村よ」

 わけのわからない地名が飛び出し、彼は混乱した。
「聞いたことのない国だ。どの辺にある?」
「どの辺、って……北よ、北。四つの帝国の北側の国」
 彼女は靴底で円を描き、更に重ねてバッテン印を描くと、その上側を指さした。
 彼はそれを見て、これはとんでもないことになったぞ、と思った。彼女の描いた地図はまるでキリスト教的世界観のいわゆるTO地図ではないか。
 一体俺はどこへ来てしまったのか、と彼は思った。どこかほかの世界に紛れ込んでしまったかのようだ。いや、日本語が存在する以上それはあり得ない。心理実験かなにかで、一時的
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