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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十四話 決戦、ガイエスブルク(その4)
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な」
「左翼?」
鸚鵡返しに問い返した俺にブラウラー大佐が頷いた。

「見ての通り、敵はガイエスハーケンを避けるために退避行動を取りました。そのため敵は戦線を組めずにいます。そして敵は攻撃を得意とする指揮官を揃えましたが彼らはいずれも防御は不得手のようです」
「なるほど」

確かにスクリーンに映る敵は苦労しながら逃げている。おまけに戦線が組めないため援護し合う事も出来ずに居る。少しずつ集結しようとはしているが攻勢をかけていた時の勢いは何処にもない。

「予備は左翼に出したほうが良かったかもしれませんな。予想外の大物がかかったかもしれません」
「……予想外の大物?」
「ヴァレンシュタイン司令長官です。味方の撤退を援護するためでしょう。最後尾を務めようとしているようです」

慌ててスクリーンを見直した。そこには味方の撤退を援護し敵の追撃を鈍らせようとしている艦隊があった……。



帝国暦 488年  3月 3日  23:00  帝国軍総旗艦 ロキ エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「正面の敵、攻撃をかけてきます!」
オペレータの報告に思わず溜息が出た。正面の敵、ヘルダー子爵か……。しつこい奴だ、お前は俺のストーカーか! いや、しつこく追ってくるように仕向けているのはこっちなのだ。文句を言える義理ではないのだがそれでもうんざりする。

「右方向よりハイルマン子爵の艦隊も攻撃をかけてきます!」
ハイルマン子爵、こいつもさっきからしつこい。よっぽど俺を殺したいようだ。リメス男爵家の件が有るからな。あの件はカストロプ公の仕業だが連中はその事を知らない。俺も特に誤解を解くような事もしなかった。おかげで連中、酷く怯えているようだ。遮二無二攻撃を仕掛けてくる。

「ビッテンフェルト提督より入電! 命令を!」
どいつもこいつもうるさい事だ、また溜息が出た。“命令を”か、こちらの撤退行動を援護したいようだが却下だ。お前が無様に逃げて、俺が後衛を務める、そうじゃないと敵が追ってこない。まあ気持は分からないでもない、司令長官に後衛を務めさせて逃げるのは気が引けるのだろう。

「ビッテンフェルト提督に返信、こちらに構わず撤退せよ」
「はっ」
「全艦に命令、正面の艦隊の中央に主砲斉射三連、撃て!」

俺の命令とともに艦隊から主砲が三度、ヘルダー子爵の艦隊に撃たれた。たちまち敵は混乱する。思いっきり突き崩してやりたいという気持を抑えてハイルマン子爵への攻撃を命じた。

「続けて右方向の艦隊の中央に主砲斉射三連、撃て!」
主砲が発射され敵が混乱するのが見えた。これで時間が稼げるだろう。連中、俺の首を求めて夢中だ。協力しあう事も忘れている。これなら凌ぐ事は不可能じゃない。

メルカッツは左翼を上手くまとめている
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