第三章
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「歯を全て抜いてから胃腸の調子が悪い」
「はい、確かに」
「用足しの時が増えましたね」
「そうなってしまいましたね」
「そうなった、噛まずに流し込むからか」
王はここでもこのことに原因を見ていた。
「だからか」
「歯を全て抜くと」
「そうなってしまいましたか」
「王は」
「そうだ、どうもだ」
王は眉を顰めさせ言った。
「歯があった時の方がずっといい様だ」
「ですか」
「実は」
「虫歯や歯槽膿漏等の心配は確かにないが」
だがそれでもというのだ。
「どうもな」
「そうしたものよりも遥かに」
「悪いことが起こっている」
「そうなってしまいましたか」
「ここだけの話だがな」
王は眉を顰めさせたまま話した、実際に王はこれまで以上の大食とそれに伴う肥満を感じそして常に食べたものを鼻から出してしまう様になった。
そしてだ、周りは密かに話した。
「あまりにもお通じが多くなり」
「用足しのお時間がかなり増え」
「しかも間に合わず」
「お粗相さえな」
「多くなった」
「お口とお鼻がつながっているせいか」
このことについても話された。
「食べたものがどちらにも残り」
「その匂いがずっと残っていてな」
「酷いお口の匂いだ」
「お鼻のそれと混ざってな」
「会議の時の王のお口の匂いが気になる」
「お身体の匂いもな」
失禁する様になりしかもそれが頻繁でだ、尚且つ誰も風呂には滅多に入ることがなかったのがこの頃の宮廷だ。
「凄いものだ」
「床を共にされる方々は大変とのことだ」
「王の匂いに耐える為に」
「お口の匂いも身体の匂いもな」
「吐きそうになるとのことだ」
「実際会議でも凄い匂いだ」
「お傍にいるだけでな」
「歯を抜かれてな」
「王はそうなってしまわれた」
王自身が困っているだけでなくだ、周りも王の悪臭に悩まされる様になった。
それでだ、王はごく親しい者達に密かにこう漏らしたのだった。
「わかったことがある」
「といいますと」
「それは」
「歯のことについてだ」
自分から一本もなくなった、だ。
「よくな、そして余の歯のことは後世に伝わるな」
「はい、必ず」
「王の為されたことは全て書き残されるので」
「ですから」
「それで」
だからというのだった、彼等も。
「歯のことも書き残されます」
「そして後世に伝えられますので」
「このことはご安心を」
「ならいい、余はこのことでも王の務めを果たせた」
王は彼等の言葉に満足して述べた。
「歯の大事さを後世に伝えられたのだからな」
「教訓を残すのも王の務め」
「だからこそ」
「そのことに満足しよう」
こう言うのだった。
ルイ十四世があらゆる病の元凶は歯であるという医師の主張を聞きその
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