第一章
[2]次話
王様も大変
ルイ十四世はその話を聞いてだ、話をした廷臣に興味を感じている顔で問うた。
「歯がか」
「はい、歯こそがです」
「あらゆる病の元凶か」
「その医者はこう言っています」
まさにというのだ。
「歯があるからあらゆる病が起こるとです」
「その医者は言っているか」
「左様です」
「歯がか」
王はその話を聞いてまた言った。
「それは面白い話だな」
「そして歯を抜けばです」
「あらゆる病から解放されるのだな」
「そう言っています」
「そうか、ではだ」
「では?」
「それを確かめてみよう」
王は興味を感じている顔のまま廷臣に答えた。
「その話が本当かどうかな」
「では誰かを使い」
「いや、余がだ」
「王がですか」
「そうだ」
こう廷臣に答えた。
「そのアントワーヌ=ダガンだったな」
「はい」
「その医者に会ってだ」
そのうえでというのだ。
「実際にまことかどうかな」
「歯をですか」
「全て抜かせる」
「それは」
「王の責務だ」
王は廷臣に強い声で言った。
「学説の正しさをその身で明らかにすることもな」
「ですが歯は」
「余は決めた」
断固たる言葉だった、玉座にいる者に相応しく。
「歯を抜きそしてだ」
「その説の正しさをですか」
「明らかにしよう」
こう言ってだ、王はそのダガンという医者と会うことにして彼を呼んだ。彼が言うには。
「歯を全て抜きます」
「そなたが言っている通りだな」
「そしてその抜いた後を焼きゴテで焼き傷を埋めます」
「そうするのか」
「はい、麻酔を使いますが」
「よい、麻酔なぞ使うことはない」
王はそれはいいとした。
「手術の痛み位絶えずして何が王か」
「だからですか」
「そうだ、それはいい」
麻酔はというのだ。
「そのまま歯を全て抜いてだ」
「そしてですか」
「傷跡を埋めよ」
「それでは」
こうしてだった、王は麻酔なしでだ。
己の歯を全て抜く手術を受けることになった、その後まで。
ダガンは自分が言った通りに王の歯を一本一本抜いた、その痛みは想像を絶するもので王は抜かれる度に地獄を感じた。
しかし彼は一言も漏らさなかった、王としてだ。
痛いとも呻くこともなくだ、全てだった。
歯を抜かれた、それからだった。
焼きゴテで抜かれたその跡を埋められた、この時は口の中を焼かれる激痛を味わったがこの苦しみにも一言も漏らすことはなかった。
だがここでだ、手術が失敗して。
「申し訳ありませんが」
「何かありましたか」
手術直後の痛みで言葉は漏らしていないというよりかは出せなくなっている王に変わって侍従がダガンに問うた。
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