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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十三話 決戦、ガイエスブルク(その3)
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オペレータに指示を出すとプフェンダー少将が問いかけてきた。

「グライフス総司令官、よろしいのでしょうか。いささか時間が少なすぎると思いますが」
「五分で十分だ」

思わず厳しい口調になった。ガイエスハーケンは囮なのだ。一隻も撃沈できなくても構わない、そうフェルナー准将に言ったのをこの男は聞いていなかった。公も味方に犠牲者を出すなと言っていたではないか、役にたたん。手強い敵よりも無能な味方のほうが苛立つ……。

私が不機嫌だと理解したのだろう。プフェンダー少将は何も言わず引下がった。クラーマー大将も無言で控えている。気まずい空気が漂ったが仕方が無い。後は時間が経つのを待つだけだ。

「残り五分です! 左翼に退避命令を出します!」
「急げ!」
オペレータが残り五分と告げた時、私はいい加減待ち草臥れていた。もう少しで“未だ五分経たないのか”とオペレータを怒鳴りつけるところだった。

「味方左翼、退避行動始めました」
「敵右翼も退避行動を始めています」
あれほど激しく攻めていても敵は冷静だ。こちらの動きを見てガイエスハーケンが来ると判断した。これではガイエスハーケンをもって敵に致命的な損害を与える事は難しい。

やはりガイエスハーケンは決戦兵器足りえない。それは此処最近のイゼルローン要塞攻略戦を見れば分かる。反乱軍はトール・ハンマーを酷く警戒している。滅多な事では射程内に入ってくる事はない。そのあたりはこちらも同様か……。

味方を犠牲にする覚悟がなければ敵を誘引出来ないのだ。そういう意味ではクライストもヴァルテンベルクも正しかったのかもしれない。“味方殺し”の汚名を受けなければ敵に致命傷を与える事は出来なかった。

スクリーンには退避行動に映る敵味方とガイエスブルク要塞が映っている。要塞の一点が急速に白く輝きだした。それと同時に敵味方の退避行動に拍車がかかった。

ガイエスハーケンの発射を待っていた私の耳にオペレータの声が入った。
「敵左翼、後退します!」
「!」

馬鹿な、どういうことだ、何故今後退する! フェルナー准将が私達を犠牲にしても一撃を敵に与えるとメルカッツ提督は判断したのか? それとも念のため危険を避けるため後退したのか? だがこのまま見過ごしては敵を逃がしてしまう!

「敵左翼の予備はどうしている?」
「後退しています!」
後退している……。こちらの動きを読んだわけではないという事か。ならば取る手は一つだ! 迷うな、セバスチャン・フォン・グライフス!

「全軍に命令、反撃せよ!」
「はっ」
「フォルゲン伯爵、ヴァルデック男爵に伝えよ、ガイエスハーケン発射後、敵左翼部隊の側面を攻撃、粉砕せよ!」
「はっ」

私が命令を出すのと同時に白く輝く巨大なエネルギー波が宇宙を切り裂い
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