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覚悟の秋
第三章

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「ここでって思ってたのよ」
「最初からだね」
「ええ、それでね」
「じゃあ」
「言うわね」
 こう前置きしてだ、私は彼に顔を向けた。
 そしてだ、一言言った。
「結婚しましょう」
「結婚?」
「そう、ここで言おうって思ってたの」
「秋にだね」
「ジューンブライドっていうけれど」
「じゃあ予定は」
「六月って考えてるけれど」
 この言葉は俯いて言った。
「けれどね」
「その前にだね」
「プロポーズは」
 自分でもわかった、今の私の顔は真っ赤になっている。それで言葉も思った様に出なかった。さっきまでは出ていたのに。
「今にって思って」
「そうだったんだ」
「女の私から言うけれど」
「俺が言うんじゃなくてね」
「結婚しましょう」
 私はまたこの言葉を出した。
「そうしましょう」
「うん」
 彼は微笑んで私に答えてくれた。
「俺でよかったら」
「それじゃあね」
「それでね」
 また彼から言ってきた。
「君から告白してくれたけれど」
「そうよね」
「後は俺がやらせてもらうよ」
「式のこととかは」
「だって全部君がするんじゃ」
 それこそという口調だった。
「俺も駄目だからね」
「それでなのね」
「式は六月でいいよね」
「ええ」
「その前に入籍もあるし」
「それじゃあ」
「六月に式が出来る様に」
 また私に言ってくれた。
「俺でやっていくよ」
「じゃあお願いするわね」
「それでね、いや今回の旅行は」
 この箱根での二人でのそれはというと。
「凄いことになったね」
「ここまでずっと色々考えたわ」
「言うって決めていても」
「あなたがどう返事してくれるか不安だったし」
 それにだった。
「言うって決めてもそうするまで勇気がいったし」
「怖かったり」
「そうした気持ちもあったわ」
 特に断られたらと思うとだ、私は怖くて仕方がなかった。
「だからこれまではね」
「考えてたんだね」
「けれどあなたがいいって言ってくれたから」
 私のプロポーズを受けてくれたからだ。
「ほっとしたわ」
「そうなんだね」
「ええ、生きていて一番ね」
 そして嬉しかった、彼にこのことも言って。
 それからはだ、彼にあらためて言った。
「じゃあこれからは」
「最後にお風呂に入って」
「帰りましょう」
「そうだね、それで六月には」
「結婚式よ」 
 二人で笑顔で話した、私の秋は覚悟を決めた秋だったけれどその覚悟は実った。その実った幸せに神様に心から感謝した、そして秋はこの時から私にとって最高の季節になった。六月を除いてこれ以上はないまでに気持ちのいい。


覚悟の秋   完


                           2016・3・25
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