第二十三章
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そしてだった、かつてヒトラーが住んでいた総統官邸の跡地の前でだった。沙耶香は夜の中でだった。
待っていた、するとだった。沙耶香の前に速水が現れた。彼は微笑みつつゆっくりと沙耶香の前に来てだった。
そのうえでだ、彼女に言った。
「では今から」
「決着をつけに行きましょう」
「騎士殿に戻って頂きましょう」
「土の中まで」
「そして最後の審判の時まで」
「眠ってもらうことになるわね」
キリスト教の思想からだ、沙耶香は述べた。
「そうなるわね」
「そうですね」
「さて、騎士殿は何処に行くか」
その最後の審判の審判のことにもだ、沙耶香は言及した。
「そこはもう決まっているかしら」
「神の忠実な僕ですから」
「それ故になのね」
「当時の倫理観では批判される理由がありません」
「だからこそ天国に行ける」
「間違いなく」
「そういうものなのね、同じ神を信仰していても」
それでもだとだ、沙耶香はややシニカルな笑みを浮かべてそのうえで速水に対して言った。
「時代が違えば倫理が違うのね」
「そして教理も」
「それは神が決めるものであり」
神が聖職者、キリスト教で言うと教皇を頂点とした枢機卿や司教、神父等の口を借りてそうしているのだ。中にはそうではない者もいるがカトリックではそうなる。神の力は少なくとも人のそれなぞ及ぶものではない。
「人はそれに従うのみです」
「神の教理は時代により変わるけれど無謬」
「そうなりますね」
「矛盾していると言えるかしら」
「人から考えれば、しかし人は所詮人です」
速水は知的な微笑みで話していた、沙耶香と違いそこにシニカルさはない。
「神の考えを完全に理解することは困難です」
「そしてあの騎士殿は当時の倫理においては非はない」
「ですから地獄には落ちません」
「この時代の多くの罪のない人達を殺めてもね」
「この時代だから罪があるので」
「彼の時代では罪にはならない」
「そうなります、しかしあの方は止めなければなりません」
速水はこのことは強く言った。
「これ以上この時代では罪のない人を犠牲にしない為にも」
「そうなるわね、では行きましょう」
「あの方のところに。では」
「今からね」
速水も沙耶香もだ、共にだった。
その手に出したものがあった。速水はタロットの小アルカナのカード全てにだった。沙耶香は一羽の梟だった。
速水の手からだ、カード達は自然に動きベルリンの各地に飛んで行った。そして沙耶香の手からもだ。梟は飛び立ち。
どちらも何処かへと飛び去っていった、沙耶香は梟が飛び去った方を見つつ言った。
「昼は烏、夜は梟よ」
「探す為に出す鳥は」
「どちらかに限るわ」
「夜の梟に見えないものはない」
「そう、アテネの力よ」
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