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星がこぼれる音を聞いたから
2. ホワイトタイ
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たが……状況が飲み込めないのにただ隼鷹に引っ張り回されるのは納得がいかんっ。

「ちょっと待て隼鷹!」

 俺は隼鷹の手を強引に振り払った。俺の前にいる隼鷹がこっちを振り返る。今まで見たこと無いくらい、真剣な表情だ……。

「なに!?」
「どこ行くんだよ!?」
「燕尾服ないんでしょ!?」

 ……はい。そこを突っ込まれると、俺はとても弱いです。

「だから貸衣装屋に行くの! 飛鷹が調べてくれるから!!」

 あ、なるほど……と俺がのんきに隼鷹の機転の良さに感心していたら、俺の背後からパタパタという走る足音が聞こえてきた。

「隼鷹!」

 振り返ったその先にいたのは、大きなバッグを抱えた飛鷹だった。飛鷹もなんだか戦闘時みたいな、キッとしたすごく真剣な面持ちをしてる。眼差しなんか艦載機を召喚する時みたいな鋭い眼差しだ。でも走る音はパタパタ……。なんだかそのギャップが面白い。

「ほらあなたの服! 持ってきたわよ!!」
「ありがと!」

 俺達のそばまで来た飛鷹は、その凛々しい表情のまま手に持った大きなバッグを隼鷹に渡していた。お互いを見る凛々しい表情が一瞬だけ並んだ。確かに髪型も性格も全然違う二人だが、その凛々しい横顔はそっくりだった。

「あなたは貸衣装屋で着替えればいい! 必要なものは全部そろってるから!」
「さすが! 頼りになる姉だね!!」

 白状すると俺はこの時、二人の横顔に……いやそれじゃ語弊がある。隼鷹の凛々しい横顔に見とれていた。

 二言三言言葉を交わした二人。その後飛鷹がキッとした顔のまま、俺のそばまで歩いてきた。『飛鷹と戦うときの深海棲艦ってこんな心持ちなのかなぁ……』と、この非常時にあるまじき、のんきなことを考えている俺の襟をギュッと掴んだ飛鷹は、そのまま俺の顔をグッと自分に近づけ、俺の耳元でそっと優しくささやいた。

「……楽しんでくるのよ?」

 『へ?』と俺が聞き返そうと思ったその瞬間、飛鷹は俺の襟からパッと手を離し、俺の横を素通りしていった。

「ほら提督! 行くよ!!」
「お、おう」

 隼鷹に手を引っ張られ、俺は飛鷹から離れていく。

「飛鷹! ありがとう!!」

 隼鷹の馬鹿力に引っ張られ、距離が離れていく俺と飛鷹。俺と隼鷹を見送る飛鷹の顔は、周囲の空気が一瞬で柔らかく、温かくなるような……そんな、柔らかくて優しい小春日和のような笑顔だった。

 宿舎を出て、鎮守府の正門に向かう。年季の入った正門をくぐり抜けると、そこには一台のタクシーが止まっていた。運転手がドアを開けるのも待たず、隼鷹は後部座席のドアを開け、俺を後部座席に投げ込んだあと、自分も大急ぎで飛び乗ってきた。

「出して!」
「え……出せって……どこへ!?」
「いい
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