2. ホワイトタイ
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かないほど細くて綺麗なその指が、『ホワイトタイでおこしください』という一文を力強く指差していた。
「マジかー……でも白いネクタイなら問題ないだろう。行きがけに洋服屋に寄って買っていけば……」
まぁ確かに白いネクタイなんか持ってないし……なんて俺がのんきにかまえていたら、隼鷹はまたしても普段の隼鷹にあるまじき態度で頭を抱えて首を横に振っていた。
「てーとくぅ……“ホワイトタイ”って何か知ってる?」
「何って……“タイ”ってネクタイのことだろ? てことは、白いネクタイだろ?」
「こういう時に“ホワイトタイ”って言ったらテールコートに白の蝶ネクタイのことなの!!」
「……テールコートって何?」
「燕尾服!!!」
驚愕の事実……ヤバい……燕尾服なんて持ってないぞ俺……どうするんだ……
「それで!? 白の蝶ネクタイは!?」
「……も、持ってません」
「燕尾服は!?」
「持ってません……」
再び頭を抱えて首を左右に振りながら、隼鷹は『はぁ〜……』と茶色いため息をついた。ヤバい。こんな事態は考えてなかった。恥をかきに行くつもりだったから、恥ずかしい事態に陥ることは覚悟していたが……これじゃ恥をかく舞台にすら上がれない。今回の晩餐会への出席は司令部からの命令でもある。まずい……。
「ど、どうしよっか隼鷹……さん?」
海軍の礼服でいいだろうと思っていたら……なんてこった……いや確かにドレスコードを確認しなかった俺も悪いけど……でも仮に確認してたとしても同じか。なんせ『ホワイトタイ』を『白のネクタイ』だと思ってるぐらいだから。
ヤバイ。晩餐会のはじまりは夜7時……今はもう5時だ……これから燕尾服を買いに行くのか……でもああいうのってオーダーメイドでめちゃくちゃ高いんじゃなかったか……今の鎮守府にそんな大金出せないぞ? 唯一の経費請求はこの前の秋祭りで使っちゃったし……ポケットマネーで出すか……いや待ておれそんなに金ないんだけど……。
「……あたしたちがなんとかする」
さっきまでの呆れ果てた隼鷹とはまた違う、どちらかというと戦闘時に近い凛々しい表情をした隼鷹がそこにいた。隼鷹はまるて艦載機を召喚するときのような凛々しい表情で執務室の電話を使い、姉の飛鷹に連絡を取り始めていた。
「あぁ飛鷹? 近所に貸衣装のお店あるか知ってる? ……うん。うん。出来れば品揃えがいいとこ。……違う。あたしじゃなくて提督。……うん……そう……」
その後、受話器の向こう側にいる飛鷹と二言三言言葉を交わした隼鷹は、その受話器を盛大にガチャンと叩きつけ、俺のそばまで来ると……
「ほら行くよ!」
と俺の右手を取って執務室から引っ張りだした。唐突なことで俺は隼鷹にされるがまま外に引っ張られていっ
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