長女の結婚騒ぎ・後編
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から。冷奴にかけた餡は、実は塩気を少し強めてある。口の中に味が残りやすいのだが……。
「! 口の中に味が残りません。」
「うん。さっきのキツさが上手く口の中をリセットしてくれる。」
そう。久保田の萬寿はスッキリとしたキレの良さで、どんな料理にも合わせやすい。
次は焼き物。今日は地元近くで取れたホッケの開きを用意した。
「うん、やっぱり居酒屋とかで食べるよりも肉厚だね。」
「でも、ちょっと脂がキツいかも……。」
でも、そんな脂も萬寿が洗い流し、次の料理の味を堪能しやすくしてくれる。懐石料理やコース料理を食べる時などに最適と言える一本だろう。
その後も蕪の煮物〜海老の擂り身詰め〜や、茶碗蒸し、鯛の活け作り等を味わって貰った。二人とも食べるペースを落とす事なく食べ進めて舌鼓をうっていた。
「さて、最後は天ぷらかな。」
用意したのは車海老、穴子、鱚、白子の四種類。衣は十分に冷やして作り、少しダマが残る位に混ぜる。キレイに混ぜきってしまうと衣がモタつく原因になるからな。
薄く衣を付け、菜種油で揚げる。油に浮かべた後も衣を散らすように垂らしてやり、サクサク感を作る。
具材に火が通ったら油から上げ、熱い内に塩を振る。
「さぁ、熱い内に召し上がれ。」
かぶりついた瞬間、サクッという音と共に、海老のエキスが溢れ出す。
「「熱っ、熱っ、あちちち……。」」
結婚してないが言ってやろう、似た者夫婦め。
「さて、満足頂けましたか?」
全ての料理を食べ終えたところで、俺は二人に尋ねた。
「えぇ。お話には聞いていましたが、とても美味しかったです。」
「私も。その前にも飲食してきたのに、ペロリと食べられちゃいました。」
「そっか、そりゃ良かった。妙高、君達も今日の料理や萬寿の組み合わせのように、様々な辛苦も乗り越えられる……そんな夫婦になってくれ。」
俺も臭すぎるかな、と思う台詞を言った瞬間、妙高の目から大粒の涙が溢れ出した。それを抱き止めて頭を撫でてやる男の目にも、妙高の電探に良く似た型の眼鏡が掛けられていた。成る程、ペアルックか。離れた所でも繋がりを感じていたい……そんな思いがあったんだろうな。
それから1週間後、妙高は盛大に結婚式を挙げた。俺は残念ながら参加できなかったが、非番の艦娘と青葉を送り、代わりに盛大に祝って貰った。その翌日、結婚式と披露宴の一部始終を収めたビデオの上映会で妙高が恥ずかしさの余りに絶叫していたのが印象的だった。そして彼女は今日も、新しい家族の待つ家から鎮守府に元気に通って来ている。
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