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提督はBarにいる。
長女の結婚騒ぎ・前編
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進行していたとはなぁ。」

 俺は面倒な事になった、と頭をガシガシと掻きむしる。

「す、すみません。もっと早くにご相談していればよかったのですが……。」

 慌てて謝ってくる妙高を俺は制した。こんなプライベートな話、いくら上司とはいえしにくいだろうからな。

「いや、それは仕方ねぇだろう、常識的に考えて。……で、先方の親御さんなんかも理解してるのか?『人と艦娘の結婚』について。」

 問題はそこだ。やはり昔ながらの人の考えならば、自分の息子が得体の知れない人の形をした物と夫婦になろうというのだから、反対も強いだろう。家族の理解。それが最も高く、険しい壁だった。


「はい、そこは抜かりなく。先日彼のご両親にご挨拶に伺う時に、大淀さんにある程度フォローして頂きながら、私が艦娘である旨は包み隠さず説明して来ました。」

「あ?まさかあの時の有給ってまさか……。」

 思い出した。殆ど有給なんぞ取った事の無かった大淀が、有給を取って1日鎮守府に居ない事があった。あの時は『何れ解りますよ♪』とはぐらかされたが、この事だったのか。



「はぁ、まぁ解った。で、お前はどうすんだ?結婚して退役するのか、しないのか。」

 これが提督として一番聞かなくてはならない案件だ。艦娘は建造すればまた同型の艦は造れるだろう。だが、それをまた今の妙高と同じ錬度まで鍛え上げるにはそれなりの期間とコストが掛かる。ましてや改二改装まで済ませた重巡洋艦だ、貴重な戦力を失いたくは無いのが本音だ。

「その辺りのお話もさせて頂きました。彼のご両親も未だご健在ですし、先方からも『最後までお役目を果たしてから家庭に入って欲しい』とのお言葉を頂きました。」

 流石に前大戦経験者、今の状況の理解力が違う。

「解った、なら俺からは止める物は無い。待ってろ、今許可証を……。」

「あ、それとですね……。」

 妙高が言い辛そうに放った一言。それを聞いた俺は、思わず万年筆を取り落とし、白い制服のズボンに黒いインクの染みが出来ている事さえ気付かなかった。普段なら、鳳翔さんに死ぬ程怒られる、と狼狽えるのに。
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