第十七章
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「私は滅多にしませんね」
「占いでもそうね」
「はい、占いは一期一会の場合も多いですし」
飛び入りの客がいきなり頼んでくることもある、尚速水のタロット占いは外れることがないと評判だ。彼の占いはいいものでも悪いものでもアドバイスである。いいものの場合はそうなる様にするにはどうかと話し悪いものの場合はこの様にならない為にはどうすべきかをアドバイスする。悪いものは避ける様にするのが彼の占術なのだ。
「仕事の途中でとはです」
「そちらでもないわね」
「左様です」
「それは私もそうね」
「表のお仕事では」
「そうよ」
実は沙耶香も表の仕事を持っている、アンティークなアクセサリーショップの経営者だ。
「こちらの仕事は一期一会よ」
「常にですね」
「ええ、お店のお客さんはね」
「一度来られて」
「冷やかしでも買うにしても」
どちらにしてもというのだ。
「貴方の表のお仕事と同じよ」
「そこは一緒ですね」
「ええ、けれどね」
「今はですね」
「会いに行きましょう」
市長にというのだ。
「そうしましょう、そしてね」
「私の到着と相手のことを」
「話すわよ」
「わかりました」
速水も応えた、そしてだった。
二人は市庁舎に入りそこの市長室まで言った。市長は既に職員達に話をしていたのか二人はスムーズに市長室まで行くことが出来た。
市長室の扉をノックするとだ、すぐに返事が来た。
「どうぞ」
「それでは」
速水が応えた、そしてだった。
二人で市長の部屋に入った、市長室は質素だが格式と気品のあるドイツ貴族それもプロイセンのそれを思わせる趣の部屋だった。隙がなく全体的に堅い。
その部屋のやはり質素だが隙のない造りの席に市長がいた、市長は二人が部屋に入るとすぐに席から立ってだった。
二人に笑顔でドイツ語で挨拶をした、そのうえで二人を部屋の中にあったソファーに案内して彼自身は向かい側の席に座った。それから話をはじめた。まずは速水が名乗った。
「はじめまして、依頼を受けた速水丈太郎です」
「貴方がお願いしたもう一人の方ですね」
「はい」
速水は微笑んでその通りだと答えた。
「左様です」
「そうですね」
「昨夜ベルリンに着きました」
「プラハにおられましたね」
「そちらでのお仕事を終えまして」
そしてというのだ。
「今ここにいます」
「左様ですか」
「そうです、そして今回のお仕事には間に合ったでしょうか」
「充分です、ではあらためてお願いします」
市長は速水に穏やかかつ堅実な口調で言った、そしてあらためてだった。
その速水そして沙耶香から昨夜のことを聞いた、その話を最後まで聞いてだった。市長は考える顔で述べた。
「騎士、ですか」
「お話させてもらった通りよ」
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