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黒魔術師松本沙耶香 騎士篇
第十六章
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「これでも身だしなみは整えてきました」
「シャワーは浴びたのね」
「熱いお風呂に。そしてコロンも忘れていません」
「今のベルリンにはない香りね」
 この季節のこの街には、というのだ。
「金木犀。それもかなりね」
「この香りは好きなので」
 かぐわしい日本の秋の香りを朝のベルリンに漂わせながらだ、速水は沙耶香に答えた。
「ですから」
「その香水を付けたのね」
「如何でしょうか」
「この寒い街で金木犀の香りは合わない様で」
 それでもというのだ。
「合うわね」
「絶妙にですね」
「ええ、貴方らしい趣味ね」
「お褒めに預かり何よりです」
「それでは行きましょう」 
 沙耶香は速水の横に来て彼に告げた。
「今から」
「はい、それでは」
「これも仕事のうちだから」
 沙耶香も速水もだ、それぞれだった。
 自分達の前に青い渦を出した、沙耶香は右手を前に出して大きく開き速水はタロットカードの節制を出して。
 そうしてそれぞれの渦に入りだ、一瞬でベルリンの市庁舎の前まで出た。渦はそちらにも出ていたのだ。
 ベルリン市庁の建物を見てだ、沙耶香はこんなことを言った。
「ドイツらしいと言うべきかしら」
「建物の趣が、ですか」
「ええ、それがね」
「ドイツ、プロイセンの」
「この赤煉瓦は」
 見れ赤煉瓦の左右対称の見事な建築だ、沙耶香はその建築を観つつ自身の隣にいる速水に対して言ったのだ。
「そんな感じがするわ」
「武骨ですか」
「フリードリヒ大王の好みの様なものも感じられて」
「あの人はロココでしたね」
「サン=スーシーよ」
 日本語の訳して無憂宮だ、その美しさには世界的な定評がある。
「あの宮殿も築いているわ」
「そのロココの趣もですか」
「この市庁舎からは感じるわ」
「そうですか、かつては東ドイツの市庁舎でしたね」
「ええ」
 大戦中の空襲で破壊され復元された後は東ドイツ即ちドイツ民主共和国のベルリン市庁舎として使われていた、西ドイツ即ちドイツ連邦共和国側は別の市庁舎をもうけそこを使っていたのだ。歴史の一ページである。
「それが統一されてね」
「今はベルリンの市庁舎ですね」
「完全にね」
 ベルリンも東西に分かれていたのを統一されたからだ。
「ブランデンブルグ門も開いたしね」
「そういうことですね」
「そしてね」 
「今からですね」
「この中に入ってね」
「市長さんにお会いしますか」
「ええ、ただ私は昨日もお会いしてるけれど」
 速水を見ての言葉だ。
「貴方は違うわね」
「昨夜着いたばかりですので」
 このベルリンにというのだ。
「ですから」
「そうね、ではね」
「はい、これよりお邪魔して」
「市長さんにお会いしてね」
「仕事のお話ですね」
「そうな
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