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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十一話 決戦、ガイエスブルク(その1)
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キフォイザー星域の会戦は楽な戦ではなかった。苦戦の連続だったと言って良い。予想していた貴族達の戦いぶりとは明らかに違う。ヒルデスハイム伯の暴走が無ければ勝利はどちらに転がったか……。

「必死だと言う事だろう。我等が勝てば貴族そのものが力を失う。権力を欲してではない、生き残るのに必死なのだ」
ロイエンタール提督に答えたのはメルカッツ副司令長官だった。その言葉に皆が頷いた。必死、これ以上に厄介なものは無い。

ヴァレンシュタイン司令長官が後を継いだ。
「その必死さも分からず小手先の挑発で勝とうとしました。どうやら勝ち慣れて敵を甘く見てしまったようです」
司令長官の声には苦い響きがあった。余程今回の失敗を気にしているらしい。

「全軍を以って敵との戦いに臨みます。早期に内乱を鎮圧する必要がある以上、こちらから押し寄せなければなりますまい」
「しかし、攻めかかるのは敵の手に乗るようなもの、得策とは思えませんが?」
司令長官は焦っている、そう思ったのだろう、メックリンガー提督が諌めた。

「そうですね、その通りです」
「では」
「メックリンガー提督」
司令長官は笑みを浮かべながら言い募ろうとするメックリンガー提督を止めた。

「敵は自らを窮鼠にしようとしています。死に物狂いの力を出すためでしょう。窮鼠だから強い、しかし勝てると思った時から窮鼠ではなくなる。そこまでやらなければこの敵を崩すのは難しいと思います」

「相手に勝てると錯覚させると言うことですか。しかしそれは危険では有りませんか。そこまで追い詰められるということでしょう」
「敵は存亡を賭け乾坤一擲の戦を挑んできている、それほどの敵なのです。こちらもそれなりの覚悟をすべきでしょう。楽に勝てる戦など有りません」

司令長官が俺を見た、いや見たように思えた。司令長官の言う通りだ、キフォイザー星域の会戦におけるヒルデスハイム伯を見れば分かる。勝てると思ったから自滅した。ガイエスブルク要塞に篭る敵も同様だと言う事だろう。

そして楽に勝てる戦など無い。どれ程圧勝に見えても勝敗は紙一重のところで決まる。それが分かるのは実際にその戦闘を戦ったものだけだ。

「メックリンガー、此処は司令長官の御考えに従おう。楽に勝てる戦など無い、それは卿も第三次ティアマト会戦で分かっているだろう」
「それはそうだが」
クレメンツ提督がメックリンガー提督を説得した。メックリンガー提督も納得したようだ。その様子を見て司令長官が言葉を続けた。

「これから作戦と布陣を説明します。短時間で考えたものですから穴があるでしょう。それをこの場で皆で修正していきたいと思います。これは軍議です、遠慮は要りません。思ったことを述べてください」
前置きと共に司令長官が作戦を話し始めた。その内容が分
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