第7話(改2.4)<白い波濤>
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「やはり海は良いな」
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マイ「艦これ」(みほちん)
:第7話(改2.4)<白い波濤>
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私たちを乗せた陸軍の車は現場を離れた。
屋根は有るが半分吹きさらしの陸軍の車はガタゴトと線路脇の細い道を走る。
この辺りは郊外だから人家もまばらだ。舗装もされていない。そこを憲兵さん、かなり高速でブッ飛ばす。
境線の揺れも激しかったが……この運転の荒さでは舌をかみそうだ。
(陸軍だから仕方ないか)
私は苦笑した。
ただ隣の寛代は意外に平然としている。
(艦娘だから多少の『揺れ』には強いのだろうか?)
興味が湧いた。
「お前は車の運転は出来るのか?」
「や……」
寛代は黙って首を振った。
「そうか」
確かに駆逐艦級の彼女が車のハンドルを握る絵は、すんなりとは思い浮かばなかった。
実際、各地の鎮守府でも運転の上手な艦娘は、だいたい巡洋艦以上だ。
軍用車は直ぐに舗装された道路に出た。
(やれやれ)
揺れが収まって私は腕を組んだ。
車窓から見えるのは弓ヶ浜の平原に広がる松林や畑。それに大小の砂丘だ。
私は呟く。
「小さい頃、よくここで遊んだな」
少し意外そうに寛代は、こちらを見た。
私は説明した。
「ここが出身地なんだよ」
「……」
彼女は軽く頷いた。
(不思議な子だな)
毎回、そう思う。
前で運転している憲兵さんが言う。
「中浜駅から鎮守府まで歩きで30分です」
ミラー越しに私を見た。
「それを米子駅で、お伝えしようとしたら行かれてしまって」
「うむ、申し訳ない」
確かに軽はずみだった。
海軍とはいえ地上での自分のバカさ加減が恥ずかしい。私の両親は落ち着いた性格なのに自分はなぜ、そそっかしい?
すると憲兵さんも多少、気をつかったのか急に話題を変えた。
「えっとぉ閣下は、あの敵を何度も戦場で、ご覧になっとられるんですか?」
「そうだ」
彼は続ける。
「我々自慢の、お台場高射砲でも歯が立たンかったって……敵は相当強いンですねぇ」
「まあ、そうだな」
「ンな連中相手に閣下が戦われているとは我々も誠に心強い限りですわ」
彼の発言に私は「おや?」と思った。
(陸軍も自覚してるのか)
しかし、よく喋る憲兵さんだ。
私は隣の少女を見た。
「……」
この艦娘は陸軍とは対照的に黙って座っている。『寛代』といったな。きっと幾多の実戦をくぐり抜けて来たから空襲も恐れなかったのか。
もちろん海上では修羅場も見ただろう。だから、この子には何となく影を感じる。
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