精神の奥底
62 怪物の品格 〜前編〜
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手を戦意喪失に追い込むことはできる。
特に今まではクラスメイトなど親しい人間が敵に操られていたことが多く、スバルも無意識だったのだが、薄々は感じ始めていたことだ。
「だけど…直撃させたらお前の命まで!」
「ハッ…甘いな。殺さなくてどうする?」
「なんだって!?」
「オレはお前を殺すことに躊躇いはない。対してお前はどうだ?」
「うぅ…クッ…」
その瞬間、背筋に悪寒が走った。
子供同士の冗談ではない。
ナイトメア・テイピアは間違いなくロックマンを殺すことをまるで躊躇っていない。
ロックマンは今までの敵との決定的な違いを違いを悟った。
生きてきた世界が違うのだ。
スバルは普通の中学生で人の生死に関わる機会はほぼ無い。
争いごとに関しては、この短期間で地球の存亡を掛けた争いに巻き込まれたものの、今までのFM星人たちも決して自分を殺しに来ていていたわけではなく、ウォーロックの持つ『アンドロメダの鍵』を狙っていたに過ぎず、スバルもFM星人に操られて戦わされている身近な人間を助けるために戦っていた。
傍から見れば殺し合いには近いものの、厳密にはそれが目的でも通過点でも無い。
相手は本気で自分を殺そうとしている。
ナイフを持った男が自分を殺そうと追いかけてくるようなものだ。
それに気づいた瞬間、今まで感じたことの無い恐怖を覚えた。
『怖気づくな!スバル!今度は直撃させろ!』
「でも!?」
『あんなバケモノ、いっそこの世から消し飛ばしてやれ!』
「うっ…」
『殺らなきゃお前が殺られるぞ!!』
「クッ…分かった!!」
ロックマンは更なる切り札を取り出す。
さっきが水色のカードだったのに対して、今度は鮮やかな緑のカードをトランサーにインサートする。
『スターブレイク…!ロックマン・グリーンドラゴン!!』
今度はロックマンを春の息吹という単語を絵に描いたような竜巻が包んだ。
周囲の砂利や木の葉を巻き上げ、庭の景観を荒野へと変貌させる。
「また姿が変わった…」
ロックマンは体色が水色のアイスペガサスから、全身に名前通り龍のような意匠が盛り込まれた深緑の姿へと変わる。
風や自然現象を司る『グリーンドラゴン』、3つのうち2つめの禁じ手だった。
『スターフォースビッグバン!エレメンタルサイクロン!!!』
ロックマンは全身に竜巻を纏い、ナイトメア・テイピアに襲い掛かる。
今度は外さない、ロックマンは自分が死ぬ恐怖から何かのタガが外れたように全身に力を込めて放つ。
その証拠にウォーロックですら、驚く程に激しい嵐と化していた。
直撃すれば、威力もいつもの比ではないだろう。
しかしナイトメア・テイピアはいつものペースを崩さない。
一度、深呼吸をすると、拳をゆっくりと握り締めた。
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