魚と聞いたら、居ても立ってもいられない。
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提督も混じってもうすぐ2時間程が経つ。あれだけあった酒や野菜は粗方二人の胃袋に収まり、若干ではあるが私も顔が火照って来た。
「ん〜、食いが悪いな。」
提督も数匹カワハギを釣り上げた後はピタリとアタリが止んだらしい。私の方も午前中の大小まばらなアジの他は、たまに針をつつきはするが、本格的なアタリが無い。
「あっれ〜?提督じゃん。こんな時間に珍しいねぇ。」
溌剌とした声の方に振り向くと、私の姉……伊勢型の一番艦・伊勢がいた。その後ろにはバケツを持った数人の駆逐艦娘がいる。
私の姉はその底抜けに明るい性格のせいか、面倒見の良さが良いのか、駆逐艦娘に囲まれている事が多い。それを物陰から歯軋りしながら眺めている長門を差し置いて、だ。私の方は……顔が怖いのか、あまり近寄ってこようとしない。まぁ、喧しいのは好きではないから、構わんのだが。
「何々、こんな時間からサボリぃ〜?いっけないんだぁ。」
「バカ言え。大淀に強制的に休みにされたの。そういうお前は何してた?」
まぁ、右手のバケツと左手の熊手を見れば、何となくは想像が出来るが。
「え?暇だから他の駆逐艦の娘達と一緒に潮干狩りよ、潮干狩り。」
あっさり〜、しっじみ〜、はっまぐーりさ〜んってね。そう言いながら伊勢のバケツの中を覗くと、しじみは無いがアサリとハマグリで山盛りだ。
「はぁ。……んじゃ、釣りはそろそろ切り上げるか。伊勢に日向、今日の獲物は俺に預けろ。明日美味いモン食わせてやっから。」
まぁ、提督に預ければ問題ないだろう。明日の夜まで我慢とは少し辛いが、まぁ仕方ない。
そして翌日の夜、私と伊勢、そして伊勢と潮干狩りをしていた白露と春雨、そして新入りの江風と海風は提督の店の前に来ていた。
「提督って男だろ〜?男の作る飯が美味いのか〜?」
江風はどうやら提督の料理の腕を疑っているらしい。まぁ、そうなるな。あの味は食べなければ疑いたくなる。
「ま、まぁまぁ江風。白露姉さん達も居るんですからお行儀良く、ね?」
そう言いながら海風の顔にも、多少疑いの眼差しが宿っている。まぁ、食べればわかって貰えるだろう。
「さ〜って、今日も食べるぞぉ〜っ!」
「た、食べ過ぎてお腹壊さないで下さいね、姉さん……。」
気合いの入った白露と、苦笑いの春雨。やはり、白露型は個性的な娘が多いな、と思う。
「さてさてお嬢さん方、無駄話はそろそろ止めにして、行きますよ〜っと。」
そう言いながら伊勢が扉をノックした。
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