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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十話 挑発
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ウンシュバイク公は無理でも若い貴族なら彼の挑発に乗ってもおかしくないのだが、どうやら見込み違いだったらしい。俺の悪い癖だ、どうしても原作知識に引きずられる事が多い。この世界は原作とは違うという事を肝に銘じなければならん。そうでないといずれ大怪我をする。

敵が出てこない、となればこちらから押しかける他無いだろう。だがそれだけでは敵の思う壺だな、向こうは自らを追い詰める事で乾坤一擲の決戦をしようというのだろうが、それにみすみす乗る事になる。

負けるとは思わんがかなりの激戦になるだろう、厳しい戦いになる。工夫が要るな、確実に勝つためには工夫がいる。どうすれば確実に勝てるか、考えなければならん。そのためにも明日は……。



帝国暦 488年  3月 1日  ガイエスブルク要塞 オットー・フォン・ブラウンシュバイク


「公爵閣下、敵艦隊が来ました」
「芸の無い事だ、今日で五日連続ですぞ、ブラウンシュバイク公」
「全く、ヴァレンシュタインも何を考えているやら」
「……」

オペレータの報告に若い貴族達が嘲笑を放つ。今だから嘲笑を上げているが、最初の日に敵が来たときには出撃すると息巻いて宥めるのが容易ではなかった。

敵の艦隊司令官、ミッターマイヤー大将はコルプト大尉の件も有る。クロプシュトック侯の反乱鎮圧に参加した連中の激昂は凄まじかった。彼らがミッターマイヤーを嘲笑うようになったのは一昨日辺りからだ。

「敵兵力、約三万隻。二個艦隊です」
昨日までの倍か、単純に兵力を増やしただけか、それとも何か有るのか。いきなりその兵力で攻めてくる事は有るまいが、ヴァレンシュタイン、何を考えている?

「二個艦隊なら我等が挑発に乗るとでも思ったか」
「所詮は愚昧な平民なのだ。仕方あるまい」
オペレータの声に周囲の貴族達が嘲笑を放つ。

「敵の指揮官は分かるか」
「グライフス総司令官、気にする事は有るまい、所詮は二個艦隊なのだ」
グライフスは貴族達の嘲笑を気にする事もなくスクリーンを見ている。彼も何かを感じているのだろう。それとも当然の用心か。

「戦艦ベイオウルフ、確認しました。一個艦隊はミッターマイヤー提督です」
「残りは」
「もう暫くお待ちください」

オペレータの答えにグライフスがもどかしそうな顔をした。周囲の貴族達は何を慌てているのかといった侮蔑を含んだ表情でグライフスを見ている。

「こ、これは」
「落ち着け! どうした!」
オペレータの慌てたような口調にグライフスが反応した。

「総旗艦ロキを確認しました! 残りの一個艦隊はヴァレンシュタイン元帥の直率艦隊です!」
「間違いないか!」
「間違いありません! スクリーンに拡大します」

周囲がざわめく中、スクリーンに漆黒の戦艦が
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