暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十話 挑発
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦 488年  2月 25日  帝国軍総旗艦 ロキ エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



ガイエスブルク要塞の間近まで来た。もっとも要塞そのものは未だ見えない位置にいる。敵もこちらは見えていないだろうが、要塞近くに来ている事は承知だろう。此処へ来るまでの間に敵の哨戒部隊と何度か接触している。

問題はこれからどうするかだ。近付くか、引き摺り出すかだが、何と言っても要塞付近での戦闘は余り面白くない。何時要塞主砲、ガイエスハーケンを撃たれるかと心配しながら戦うのは余り上手な戦い方とは言えないだろう。

となると敵を引き摺り出すしかないが、あれをやらなきゃならんのか……。原作のラインハルトの挑発行為、あんまりやりたくないんだよな、あれ。なんていうかあざと過ぎるんだ、俺の感覚からすると。

ラインハルトはああいう性格だから他人を貶しても余り気にしないだろうけど、俺は駄目なんだな、何と言うかしっくり来ない。大体あんな風に上手く出来るかどうか不安がある。失敗したら無様だし出来ればやりたくない……。

でもなあ、原作では効果が有ったしやってみる価値はあるんだよな……。他の奴にやらせるか、俺がやらなきゃならんわけでも有るまい。リューネブルクとか上手そうだよな、ロイエンタールも。ビッテンフェルトも有るな。意外にメックリンガーとかも良いかもしれない。上品で辛辣に髭を捻りながらやったら痺れそうだ。

現実逃避していても仕方ないな、とりあえずはやってみるか。さて、どういう風に挑発するかだが……。



帝国暦 488年  2月 25日  ガイエスブルク要塞 オットー・フォン・ブラウンシュバイク


討伐軍が近くまで来ているようだ。辺境星域を平定するはずだった別働隊も集まっているらしい。どうやら先にこちらを平らげようとしているようだ。リッテンハイム侯を戦死させた事で敵は勢いに乗っているのだろう、その勢いをそのままこちらにぶつけようとしている。

「公爵閣下、敵軍より通信が入っています」
オペレータが緊張に満ちた声を出した。
「スクリーンに投影しろ」

大広間のスクリーンにヴァレンシュタインが映った。穏やかな笑みを浮かべている。その笑みを妙に懐かしく思ったのは何故だろう。そう言えばこの男の顔はもう何ヶ月も見ていない。いつも有るものが無いと落ち着かないとはこの事か。思わず自分の顔に苦笑が浮かぶのが分かった。

『ガイエスブルク要塞に引き篭もる臆病で小心な貴族達に告げます。卿らに僅かなりとも勇気があるのなら要塞を出て堂々と決戦をしなさい。と言ってもか弱い女子供を攫う事ぐらいしか出来ない卿らに戦争など無理ですね』

そう言うとヴァレンシュタインは肩を竦めた。わしの背後で貴族達の怒りに満ちた声が聞こえる。
「おのれ、小僧、よく
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ