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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#27
FUTURE’S MEMORYV〜Forever&ever〜
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いた。
 だが射出するモノは通常の 「矢」 ではなく歪みの無い円状に研磨された
高密度の 『鋼 鉄 球(スティール・ボール)
 設置された滑車によって既に鋼線の弦は切れるほどに引き絞られ、
(つが)えた鉄球には滴る血が塗られ波紋が迸っている。
 絶対絶命の窮地に於いてすら、尚抜け目のない男の精神に
イルヤンカは心底から驚嘆した。
 動いてなかったのは、言葉も発しなかったのは、
自身に残された僅かな力を集めて溜めるため。
 その力を逃げるのに使わなかったのは、最後に残った 『切り札』
ソレにスベテを賭けるため。
 その硬度と巨大さ、汎用性故に 『幕瘴壁』 は長時間 「持続」 出来る能力ではない。
 死に至る傷を負いながらこの男は
“そこまで見抜いて” 懸命に堪えていたのだ。
 自分が瘴壁を解き、勝ちを確信した一瞬の緩みを突くために。
 本当に、本当に悪魔じみている。
 思い付きはしても誰も実際には実行しない、実行できない。
「強者」 とは、退くべき時には潔く退く、その見極めが出来て初めて一流。
 死んでしまっては、強いも何もない。
 にも関わらず、この男は自身の生命を棄ててまで勝利を掴みにくる、
己の死さえ 『策』 の一部として、生き残る事など考えず遮二無二相手を
討ち果たしにくる。
 何故そこまで出来る?
“一体何の為に” ソコまでする?
 一人の人間に気圧された巨竜の瞳に、
高速射出された血の鉄球が波紋を帯びて飛び込んできた。




 ヴァジィッッ!!



 その巨体に似合わぬ瞬発性、即座に展開された瘴壁の被膜(ひまく)に決死の一撃は弾かれる。
 絶望の中の更に無情の上塗りだが、
長距離からの 「狙撃」 や不意の 「奇襲」 に対する防御は、
イルヤンカの最も得意とする戦処(トコロ)だった。
 嘗て、その姿の巨大さと強大さ故に真正面から立ち向かっても勝ち目はないと
判断した多くの徒やフレイムヘイズが、彼の 「暗殺」 を企てた。
 しかし老獪な王は、ソレに対する術を永き時の中で練り上げてしまった。
 文字通り自身が血を流して修得した術、磨き上げられた技に失敗はない。
 それが一命を賭して放った一撃だとしても、最終的な攻撃(けっか)は一緒なのだから。
「うぅ……あぁ……! うあぁぁ……ぁ……」
 確実な止めの為に用意していたのか、二発目の鉄球を番えた弓を握りながら
ジョセフは愕然とした表情を浮かべる。
「あぁ……あ……ああぁ……」
 諦めきれないのか、震えるボーガンの横腹をイルヤンカの貌に向ける。
『もうよせ……貴様はよく戦った。
最後の一撃、 『幕瘴壁』 を携える私でなかったなら、
如何にして防いでいたか解らぬ』
「あ……ああぁ……あ……」

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