最終話 みんなの笑顔
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―旋回性能が低い加速タイプで、このような作戦を実行すれば。急降下からの引き上げが間に合わず、地面に激突する可能性が飛躍的に跳ね上がる。
格闘戦タイプでも実行が憚られる、その無謀極まりない戦法を――彼は躊躇なくやってのけたのだ。
自分なら墜ちない。その傲慢とも云うべき絶対的な自信に基づいて。
「このっ――自信過剰野郎がァアァアァアッ!」
天から来たる裁きの如く、宇宙海賊に降り注ぐレーザー掃射。コクピット「だけ」には絶対に当てない、その猛攻を浴びたセドリック機は為す術もなく墜落していく。
パラシュートで脱出し、その愛機が無残に墜ちて行く様を見せ付けられ――セドリックはあの日の屈辱を思い起こすように、慟哭する。
そして――カケル機は、そのまま地表へと急接近し。
――機首を徐々に上げ、滑らかに地上を駆けていた。やがて、滑るように地上で停止して見せた彼の機体に――カリン達が目一杯の歓声を浴びせる。
その一連の展開はさながら、「曲芸」のようであった。
(ふざ、けんなよ……クソッタレが……)
その光景を目の当たりにして。宣言通り「曲芸」ついでに倒されたセドリックは、乾いた笑いを上げていた。
――あの速度から地上に近づいて、ああも機首を優雅に引き上げて着陸まで持って行くのは、旋回性能に秀でた格闘戦タイプでも難しい。
それを、よりによって旋回が鈍い加速タイプでやってのける。どれほどの馬鹿力で操縦桿を引けば、そんな挙動になるというのか。
超合金製の手錠を力任せで引きちぎる程の膂力がなければ、到底不可能な所業である。だが、それをやってのけるような者はもはや「人間」ではない。
――「エースパイロット」という、「超人」である。
◇
セドリック機が「曲芸」ついでに撃ち落とされた後。
その身柄を引き取りに現れたのは――ゼノヴィア・コルトーゼ将軍であった。年齢を感じさせない美貌を持つ彼女は、ポニーテールに結ばれた藍色の長髪を靡かせ――「曲芸」を終えたカケルの前に立つ。
「……三年ぶりね。少し髪も伸びて、大人っぽくなったわ」
「ゼノヴィア将軍も、お変わりなく」
三年の時を経て再会した二人は、場違いなほどに当たり障りのない言葉を交わす。言いたいことは山程あれど、それを全て口にするほど子供でもない。
そこへ、ゼノヴィア直属の部下達に連行されていくセドリックが通り掛かる。だが、かつてのライバルに対し、かつてラオフェンだった男は視線を合わせない。
「負けたよ。言い訳の余地もねぇ、ブッチギリの完敗だ」
「……」
「不思議なもんだが、あの時みてぇな悔しさはまるでない。やっと、お前とガチで戦えたからな」
「……何の話だ? オレはカリン達に本日二回目の『曲芸
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