最終話 みんなの笑顔
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そして――加速タイプ特有の大型ジェットを噴き上げ、遥か空の彼方へと急上昇していく。
「……ふん、だが詰めが甘いな。三年前に俺がお前に敗れたのは、同じスペックの格闘戦タイプ同士だったからだ。――加速性能が高くとも、旋回性能で劣るお前の加速タイプでは、俺の後ろは絶対に取れん!」
それに追従するように、セドリック機も機首を上方へ向けて行く。彼は、宙返りでこちらの背後を取るつもりだと睨んでいた。
彼の赤い瞳は、決して獲物を逃すまいとカケル機を狙う。だが――その機影が太陽に重なる瞬間。
彼の機体は、一瞬にして姿を消してしまった。
「ちっ――陽射しを目くらましにしやがったか。だが、まだだ。俺はお前が乗る加速タイプのデータは、頭にびっちり叩き込んである。例え姿を消そうと、俺にはお前が宙返りでどこに降りてくるかが、手に取るようにわかるぞ!」
だが、セドリックは焦る気配を見せず、見失ったカケル機の降下点に当たりをつけた。
例え行方を見失っても、大回りな宙返りをするつもりとわかっていれば、旋回性能で勝るこちらがその降下点へ先回りすればいい。
待ち伏せからの一網打尽を狙うセドリックは、小回りの利く自機を反転させるべく宙返りに入る。
――その時だった。
「……あ?」
宙返りに入り、機体が逆さになったセドリックの視界に、大きな影が差す。雲ひとつない、快晴だったはずの、この空に。
バカな、さっきまでそんな天候ではなかったはず。そう感じたセドリックは、深く考えることもせず、視線を下へ――青空へと移し。
真っ向から迫るカケル機に、戦慄する。
「バッ――!?」
余りのことに、声も出ない。
加速タイプのカケル機が、こんな鋭い角度で旋回して来れるはずがない。機体の旋回性能を鑑みれば、万に一つもあり得ない場所からの出現だった。
――だが、目の前に迫るコスモソードは幻覚でも蜃気楼でもない。予想だにしない位置から強襲してきた赤い鳥は、風を切る轟音と共に、宙返りしている最中のセドリック機に肉迫する。
その後部には、あるはずの「炎」がなかった。それが宇宙海賊に、この現象の答えを齎す。
(こ、これは宙返りじゃない! 失速だッ!)
――あの太陽を利用した急上昇で行方をくらました後。カケルは、宙返りに入ると見せかけ、その場で機体を失速させ――機体の質量のみによる急降下に突入していたのだ。
重い機首を重力に引かれ、垂直落下するように降下姿勢に入った彼の機体は、自分の誘いに乗った宇宙海賊の機体下部に回り込んだのである。
宙返りの最中だったため、機体が上下反対にひっくり返った体勢だったセドリックは、死角を狙うその接近に気づくことが出来なかった。
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