第6話(改2.6)<戦闘収束と憲兵>
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
艦砲射撃か。あまり触れたくない話題だ。
「ですが、直ぐに決着がついてホッとしました」
「そうだな」
それは私も同じ。
「では閣下、こちらへどうぞ」
彼は陸軍の車両を指さした。
「ご案内します。お乗り下さい」
「ウム」
……しかし腰の低い憲兵で感心した。地方には、こういうタイプが多いのだろうか? 私が今まで出会った憲兵は皆、高飛車だった。
「そうだ」
歩きかけた彼を呼び止めて私は言った。
「この子も一緒に頼む……おい、来い」
私は隠れるように離れていた寛代を手招きした。
憲兵は一瞬、不思議そうな顔をした。
「あの、閣下のお知り合いですか?」
「いや、この子も海軍の軍人だ」
「は?」
その反応は無理もない。まだ海軍以外では『艦娘』自体が軍事機密に近い。
一般市民だけでなく憲兵も含め陸軍でも、ほとんど知られていないはずだ。仮に知っていても彼女は見ただけでは普通の少女にしか見えないだろう。
「早くしろ」
私はボーッとした彼女の手を取ると半ば強引に車の傍に寄せた。
「取り敢えず鎮守府まで頼む」
「はっ」
そこで私と憲兵さんは改めて軽く敬礼した。
私の動作を見てボンヤリしていた寛代も反射的に敬礼をする。私は内心苦笑した。
(これもまた軍隊の習慣性か)
その所作はキビキビしていて気持ちが良い。少女の敬礼を見た憲兵も彼女が兵士であると理解したようだった。少し微笑んでいる。
私たちが後部座席に乗り込むと憲兵さんは発動機を起動させる。黒煙を上げて車体が震える。辺りは独特の排気臭に包まれた。
「では出発します」
私たちを乗せた車は、そのまま線路を離れた。そして作業を続ける陸軍や調査員たちの間をすり抜けた。
(せっかくの機会だ、しっかり調べてくれ)
ここぞとばかりに出てきた憲兵や陸軍だ。
(海軍には国防の、お鉢を奪われ放しだからな)
今の戦争は、ほぼ海上に限定され陸軍や空軍は何も手出しができない状況だ。同じ軍隊だから形だけ全軍で戦時体制を取っているだけだ。彼らも歯がゆいだろう。だから陸軍も空軍も常に敵の最新情報を欲しがっている。
特に陸軍は海軍と見ると憲兵を通して直ぐに探りを入れて来る。私もここまでの道中、何度も憲兵に話しかけられた。だから白い海軍の制服で街をウロウロするのは苦手だ。
今回も深海棲艦の機体が地上で撃墜されたと聞いたから陸軍は直ぐに飛んで来たのだろう。私を鎮守府に送るというのも邪魔物を排除したいという思惑か。
さっき空軍の車も見えたのだが陸軍が活動しているのを見て、そそくさと撤退してしまった。
実は海軍だって敵の情報を、ほとんど持っていない。海上で仕留めても結局『海の藻屑』となるばかりだから。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ