第6話(改2.6)<戦闘収束と憲兵>
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「おや」
見ると私が米子駅で案内をして貰った親切な憲兵さんだった。
「閣下ぁ、ご無事でしたかァ!」
彼はニコニコと手を振っていた。相変わらず妙に明るい。
彼は普段から、そういう性格なのだろう。周りの陸軍からも特に注意されることがなかったくらいだ。
私は苦笑した。
「屈託が無いな」
彼の挙動には冷静な寛代が驚いたくらいだ。
敵の残骸や列車の周辺に次々と車両が止まる。
憲兵と一緒に来た一団は明らかに陸軍の連中だ。車両には『米子』と書いてある。
(三柳にある駐屯地だな)
彼らは車を止めて順々に降りると手短に点呼。直ぐにパラパラと敵機の周りに散らばった。そして手際よく列車の消火や後片付けを始めた。
「フム」
よく見ると陸軍だけでなく鉄道省の連中も混じっている。
散乱している敵の機体。彼らは付近を立ち入り禁止にして何かを撮影したり計測を始めた。それを不思議そうに見詰める寛代。
それを見た私は何気なく彼女に語りかけた。
「陸軍には敵の情報が、あまり無いからな」
(そうなんだ)
……といった面持ちで私を見上げた寛代。興味を持ったらしい。
改めて説明を続ける。
「中央じゃ陸軍と海軍の仲が悪いからな。敵さんの情報にしても協力体制がないんだよ。だから地上に敵の機体が落ちたとなれば飛んでくる」
「……」
寛代は小さく頷いた。この話が理解できるなら単なる艦娘ではない。
そこで、さらに問いかけた。
「美保では陸軍と海軍は仲が良いのかな?」
「……」
別に回答は期待していなかったが当然、寛代は無言。
でも呆けてはいない。何か考えているようだ。
ちょうど打ち合わせをしていた憲兵が、ばらばらと解散した。その中の一人……あの米子駅で出会った憲兵が私の前までやって来てサッと敬礼した。
「閣下、美保鎮守府まで、お送りするよう指示を受けました!」
「アっ、そう?」
渡りに船だが、ちょっと驚いた。
軽く咳払いをして改めて聞いた。
「美保鎮守府までは、ここから遠いのか?」
「いえ、近いです」
言いながら彼は済まなそうな顔をした。
「実は先ほど米子駅で閣下に詳しく説明する時間が足りませんで申し訳ありません」
私も恐縮した。
「いや、君の話を最後まで聞かずに列車に飛び乗った私の方こそ済まなかった」
彼は言った。
「いえ、境線が空襲されたと聞き閣下が、お乗りになっていることを上官に報告。直ぐに対処する部隊と共に中浜へ向かうよう指示を受けましたので」
「ほう」
(陸軍にしては機転が利くな)
私は感心した。 寛代は無言のまま。
憲兵は続ける。
「遠くから見えましたが、すごい戦闘でしたね。驚きました」
「あぁ」
さっきの
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