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提督はBarにいる。
顧みても尚、前へ。
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「それで?まさか貴方はそれしきの事で思い悩んでいたのですか?」

 唐突に投げ付けられた、暴言ともとれる一言。頭の芯が灼熱し、気付いた時には加賀の襟首を掴んでいた。

「んだと?……もういっぺん言ってみろやゴラァ?」

「えぇ、何度でも言って差し上げます。貴方は大丈夫だと言った部下を信頼し、戦闘を続行した。その結果、無茶をした部下は沈んだ。そのどこに問題点があると言うのです?」

 瞬間、俺の右拳は加賀の左頬を捉えていた。吹っ飛ぶ加賀の身体。俺はと言えば殴った事で頭に上っていた血が下りて、冷静になった瞬間にハッと我に返った。

「加賀、すまん。大丈夫か?」

 頬は赤く腫れ上がっており、ジンジンと疼くような痛みが走っているだろう。それでも尚、加賀の目には力が宿っていた。

「大丈夫です。私も、恐らく『彼女』も、不器用なんです、とても。」

 左頬を押さえながら、加賀はそう呟いた。



「やはり同じ艦娘だからでしょうか。何と無くですが彼女の気持ちが解る気がします。貴方の焦り、戸惑い、そして恐怖。それを一刻も早く取り去ってあげたい。そう思ったのでしょう。その為ならば……私も同じ立場なら、この身一つで賄えるならば、喜んでこの身を差し出します。」



 焦り。そう、確かに俺はあの時焦っていた。上層部から沖ノ島海域を期日までに攻略出来なかった場合、提督としての任を解き、地方へ出向させる、と。早い話、結果を出さねば左遷するぞ、と脅されていた。そう、あの日がちょうど期日の日だった。恐らく、加賀はそれを知っていたのだ。だから普段は絶対にしないあんな無茶を……。

「過去はやり直せません。ですが、そこから学ぶ事は出来ます。だから提督……『私の事で、もう苦しまないで』。」

 幻聴だったのかも知れない。俺の身勝手な想像の産物だったのかも知れない。でも確かに今、加賀の声が2人分、はっきりと聞こえたんだ。

「加賀……、悪かった。俺はもう、迷わない。沈んだ艦娘は戻らない。でも、それを悔やんでも前には進まないんだ。それに気付かされたよ、ありがとう。」

「そうですか。なら、謝礼を頂かないといけません。」

 そういい終えた瞬間、加賀の顔がすぐ目の前に迫り、俺の唇に熱く柔らかい水羊羹のような物体が触れた。時間にして10秒位だろうか。

「はぁ…はぁ……ご馳走様でした。」

 少し息を乱しながら、耳を真っ赤に染めて加賀がそう言った。その瞬間、店のドアが吹き飛んだ。

「Heyテートクー?何をカガとだけイチャついてますカー?」

「ひえぇ……見てません、見てませんからぁ……ひえぇ〜?」

「は、はははは榛名は大丈夫じゃ……無いです。」ガクッ

「マイクチェックの時間だオラァ?」

「あ
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