第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』
【???】
勇気は、失われた。
獅子王凱は、探し続けた答えの意味を失った。
人を超越した力を持つ青年の心は、深い悲しみと孤独感で埋め尽くされていた。
目の前で真実を告げられて、望まない結末で終わったところまでは、なんとなく覚えている。
だが、その後の記憶は断続的なものとなっている。
途方もない浮遊感が全身を支配して、自分がどこにいるのかもわからないでいる。
――いいえ、あなたの戦いは終わっていないわ。まだ、あなたには、この時代で戦ってほしいの――
この声、聞いたことがある。
ティッタの身体を借りて、直接凱の意識に語り掛けた声だ。確か、モルザイム平原でザイアン率いるテナルディエ軍対ジスタート軍戦の最終局面だろうか。
直接意識……今、凱の脳内のイレインバーに語り掛けたのは、その時の声だ。
――なぜだ。なぜ俺は戦う?……もう戦う意味も、生きる意味も、すべて失われたというのに――
――何も失われていないわ――
すぐそばに、『妻』がいた。
――貴方はまだ『答え』の途上にいるだけ――
そして、『姉』がいた。
――思い出して――
さらに、『妹』がいた。
この感覚は、どこか懐かしいものがある。
それは、凱の母である「獅子王絆」が、自らの姿をした3人の少女の幻影のものだった。
まだサイボーグだった凱の画像処理回路を通して、「ムカムカ」「クスクス」「メソメソ」の表情を転送して凱を見守り、また支えてきた。
三者に言われて、凱は思い出す。幾つもの、大切な思い出が。
長く、苦しかった戦いの日々。その中で、出会いと別れを繰り返し、交わされた誓いがある。
――『あの子たち』とあなた……それでも、あなたが今の時代まで育んだ時間は、決して無意味なものなんかじゃないわ――
信じたい!信じたい!信じたい!信じ……たいのに……
――でも……倒すと誓った魔物たちが……――
知ってしまった。魔物と勇者の表裏の繋がりを。
これは『打倒』ではない。自分がこの時代に振り撒いた『始末』でしかない。
まるで、子どもがおねしょをして、親にばれない様にこそこそ動くのと同じだ。
妻がいう。
――『夜』があるから『朝』が待ち遠しくて――
姉がいう。
――『闇』があるから『光』はより輝く――
妹がいう。
――『死』の先を越えて『命』を授かれる――
そして、凱がいう。
――俺は、小さな生命を奪うものと戦う為に、生きてきた――
そう。女神による――夜と闇と死による終曲は――
いま、勇者による――朝と光と命の追奏へ続く――
それらは全て、力なき民衆、観衆が求めているもの。
『妻』『姉』
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