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マイ「艦これ」(みほちん)
第4話(改2.8)<逃避行>
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敵機は上空を旋回し続けてる。発動機の音が聞こえず黒光りする機体には何ともいえない不気味さと威圧感がある。

おまけに我々の使う航空機と違って自由自在に動き回る。

「深海棲艦め」
私は睨み付けた。

 連中には何度も辛酸を舐めた。あのチョコマ動く戦闘機は侮蔑の意味を込めて前線では『ゴキブリ』と呼んだりもする。

 歴史的には敵の出現と時を同じくして『艦娘』が出現した。彼女たちが私たち人類の味方になってから人類は優勢に傾き始めている。それほど艦娘の存在は大きかった。

 だが地上戦となれば、やはり連中が強い。地上兵器に対しては圧倒的に優位に立つ。現に陸軍も空軍も歯が立たない。

 だが意外にも連中は地上を逃げる人間は十分に索敵し切れない。

「何しろ普段相手をしているのは艦娘だからな」
連中の機体は対艦攻撃用の機体だ。そもそもゲリラのような普通の人間……特に地上において、それに特化した電探は持っていないようだ。

(だから地上で視界が悪くなると単純に相手を見つけるのが困難らしい)

そういった諸々の理由からだろうか? 彼らが戦いを挑んでくるのは専ら海上の艦娘や鎮守府に限定されることが多い。

 裏を返せば一般住民が生活する地上を彼らが空襲したり銃撃することは、ほぼ無い。それが(かえ)って陸軍の連中が歯がゆく感じる理由だ。何しろ敵が陸に攻めて来ないから陸軍は開店休業状態なのだ。

挙句、一部で陸軍縮小案も出る始末。これは世界的傾向だ。噂では海外にも艦娘は居るらしいが通信網が寸断されており情報が乏しい。詳細は不明だ。

 私は改めて少女を振り返った。
「今のうちに、逃げよう」

「……」
何か呟いていた彼女は口を閉じると小さく頷いた。
手を差し出すと躊躇(ちゅうちょ)無く私の手を取った。

(ほのかに暖かい)
この状況で妙にホッとした。

 私たちは小川を出た。身を屈めて茂みに沿って数百メートル先に見える防空壕を目指す。陸軍の対空砲火は、いつの間にか聞こえなくなっていた。恐らくは敵に攻撃されたのだろう。

そういえば美保空軍は迎撃機の一つくらい出さないのか?
(まさか全滅?)

そう思っていたら後ろから少女の声。
「空軍と……陸軍もやられたよ」

「え?」
なぜ、その情報を知ってるのか?

……いや今は問うまい。逃げるが先だ。

軍事施設が叩かれるのは仕方ないが民間人への攻撃は避けたい。軍人の使命だ。

私は不意に彼女に謝るように言った。
「済まないな」

「……」
相変わらず大きな瞳で私の背中を見つめてる気配。

 今回、美保鎮守府の提督(指揮官)という辞令を受けた私だが軍人は単独では結局、何もできないのだ。司令といえども、ここでは単なる看板だ。

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