第4話(改2.8)<逃避行>
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「空軍は……陸軍もやられたよ」
「え?」
-------------------------------
マイ「艦これ」(みほちん)
:第4話(改2.8)<逃避行>
-------------------------------
「ぷへぇっ」
思わず吐いた。泥水の味……くぼ地には水が流れていた。
そういや弓ヶ浜にゃ、こンな小川が多かった。
兵学校での訓練を思い出す……まさか自分がこの年で少女を抱えて水路に飛び込むとは。
川の外では激しい閃光と地響きが続く。時折、砕けた土や小石が頭上からバラバラと降り注ぐ。
私は少女を護りつつ低姿勢で振動に耐え続けた。その間も女の子は、ずっと大人しい……が何かブツブツ呟いてる。
(少し変わった子なのだろうか?)
俗にいう『中2病』……この年頃は、そんなモノか?
ふと振動が収まり敵機が遠ざかる気配がした。
「やれやれ」
少し顔を上げた私は改めて少女を見た。
「大丈夫か?」
私は周りの様子を見つつ彼女から離れた。
「……」
少女は呟くのを止めた。そして大きい瞳で、こちらをじっと見上げている。
お互い何も言わない。場は一瞬の静寂に包まれた。
遠くからは断続的に爆発音が続いている。
共に小川に飛び込んだから彼女も制服の上から下まで、ずぶ濡れだ。
制服もボロボロ。どこかで擦ったか。
改めて確認したが、お互いに無事らしい。
だが、この少女は敵の攻撃を恐れていない。つまり感情が動いていない。
私も海軍だから各地で住民を避難させた経験がある。普通の市民は大概、敵の攻撃を受けると動揺して逃げ惑う。結果、犠牲になった人も無数に見た。
(肝が据わっているのは元軍人くらいだ。まして女学生が落ち着いているなんて初めてだ)
妙に感心した。
「ブツブツ」
再び少女は呟き始めた。
やばい、目の焦点が合ってない。
(電波系の危ない子か?)
さっきの年輩の男性を思い出した。もし、この子もその類なら恐怖という概念は無いだろう。
私は息を殺して辺りの様子を伺う。少女の呟きと地響きは続いている。
今は夏。ジッとしてると徐々に汗ばんでくる。
「ここから早く移動したいな」
何気なく呟いた。
それでも暑い日で良かった……これが冬場ならキツイ。そもそも冬に水を被ったら動けないだろう。
「冬、水?」
不意に舞鶴の海戦を思い出す……。
辺りは焦げたような臭いが充満している。これは陸戦の臭い……海の戦いとは違う。
敵の兵器は通常火薬ではない。硝煙というより何かが純粋に焦げたような鼻にツンと来る臭いだ。
それでハッとして我に反った。危ない、ここは前線だ。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ