第2話(改2.8)<出会い、遭遇>
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資料を片付け始める。
……その時、何となく視線を感じた。ふと見ると斜め前に紺色セーラー服の女学生が座ってる。
(夏なのに暑苦しい)
そう思っていると向こうも、こちらを見ていた。
(軍の白い制服が珍しいンか?)
軍人と目が合った民間人は直ぐ目を逸らすか会釈する。
(女学生なら会釈かな?)
そう思ったが、その娘はジッとこちらを見ているだけ。
イヤ、その焦点も微妙に合ってない。
(要はボーっとしてるンかい?)
愛想笑いすら出来ないクソ真面目な性格の私だ。仕方なく目を逸らして流れる車窓の風景へ目を移した。
「あぁ、腹減ったなぁ」
……本当なら、もう鎮守府に着いてる頃か?
そもそも山陰本線では列車内で駅弁も売ってない。駅でも買いそびれた。
ガタゴト走る列車は時おり激しく揺れる。お尻がジャンプする。
「路盤が悪りィな」
言いつつ視線を車内に戻した私はギョッとした。対面に、さっきの女学生が居る。
(いつの間にっ!)
「……」
だが少女は相変わらず焦点の合ってない視線をこちらに向ける。
そして、おもむろにボソッと言った。
「逃げて」
「は?」
いきなりの発言。
その時、外から『ウー』っという音が響く。
「空襲警報?」
……列車は警笛を鳴らしながら急停車した。
≪緊急停車、緊急停車≫
車内放送が流れた。
隣の車両から走ってきた車掌が叫ぶ。
「皆さん、列車から降りて防空壕へ!」
車内にいた僅かな乗客は慌てて荷物を抱え出口へ。
境線の景色は、どこも同じようにしか見えない。
ただ車窓から格納庫がボンヤリ見えた。列車が止まった場所は空軍基地の直ぐそばだ。
私は鞄を抱えたまま車掌と共に乗客を車外へ誘導する。
「皆さん落ち着いて……外へ出たら直ぐに近くの防空壕へ!」
海軍とはいえ軍人が居ると心強いのだろう。みんな比較的、落ち着いて行動していた。これが都会なら大混乱するところだ。
……最後の乗客に続いて列車を降りて振り返る。列車の出口縁から地面まで意外と高さがある。
私は車掌と共に高齢者や小さい子供が怪我をしないように降車するのを手伝っていた。
既に遠くから妙な金属音が響いてくる。恐らく敵機だ。ただ地面の上だと距離感がつかみ辛い。
線路から少し離れた木立の向こうに小高く防空壕が見えた。そこへ向かって次々と避難を始める乗客。
飛行音は徐々に大きくなる。振り向くと海の方角……東の空に、いくつかの黒い点が見え始めた。
「来たか」
私は立ち止まって状況を確認する。
戦場で何度も聞いた特徴ある音。深海棲艦の機体で間違いないだろう。
単発的に発射音が響く。敵機方向に白い弾幕が張られていく。
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