第1話(改3.4)<7月21日>
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、某50年代には通常の艦隊と艦娘が並走して出撃していた。
だが某60年代の半ばには艦娘だけが出撃する戦い方が主流になっていた。
艦娘の方が戦力があり敵の攻撃への耐久性もある。だから人間が最前線で危険を犯す必要はない。究極のアウトレンジというわけだ。
もちろん未だ賛否両論ある戦法だ。
特に艦娘とのケッコンが合法化された某80年代半ばからは軍部内でも強行派と穏健派が対立するようになっていた。
この戦法が主流になったのは、かつて横須賀沖の海戦で、ある提督が艦娘をかばって亡くなったから、という説がある。
ただ不思議なことに、その提督が亡くなったという海戦記録は、どの公文書をひっくり返しても出てこない。もちろん該当する指揮官の名前も不明だ。
(一説に某60年代の半ば『66攻勢』辺りらしいが……まぁ軍隊に、よくある伝説の類かも知れない)
『66攻勢』とは海軍史の授業でも何度も出てくる敵の大反撃だ。歴史が苦手な私でもこの単語だけは忘れない。
無線技術の発達は艦娘戦闘の遠隔制御を可能にした。まさに究極のアウトレンジ。いつしか現海軍の艦娘による戦いにおいて指揮官が直接現地へ赴くことは皆無となった。
だが無線にも限界はある。気候条件などで途切れることも多い。特に近年は深海棲艦による電波妨害が著しい。
そして某92年、冬。私の指揮する艦娘の艦隊が深海棲艦に大敗する。
あの悪夢が果たして正確かどうか 正直、私にも分からない。
その後、軍には新しいパケット通信技術が導入され情報遅延による不具合は、かなり改善された。
(もっと早く導入されていれば……)
何度も悔やんだ。
さらにメモ帳をめくっていると別のページの『ショウコウ』という記述が眼に留まった。
「伝説の艦娘だな」
私は頭を掻いて記憶を手繰る。この艦娘は姉妹で、やたら強かった。当時の兵学校でも良く話題になった。
だがその後、彼女たちの艤装開発に絡む不正疑惑が発覚。政権交代と共にその艦娘たちの話題も自然消滅した。
当時、海軍内でも穏健派と強行派が分かれていた。それに巻き込まれたという噂だった。
強い艦娘が登場して敵をバタバタなぎ倒せば皆、幸せになる……という単純な話でもないらしい。軍部や政治の世界は難しいものだ。
「海軍もイロイロだよな」
呟いた私は先の男性が駅のホームで私の方を向いて敬礼をしているのに気付いた。
「おっ」
少し慌てた私も敬礼を返した。
街で私のような佐官を見かけても敬礼は義務ではないのだが。
(退役軍人だろうか)
そう思った。彼の敬礼が妙に型に決まっていたから。
「列車、発車いたしまぁす」
車掌の笛の音と同時に汽笛が鳴った。私の乗った客車は一瞬ガチャンという連結器の
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